観光政策のコツは、地域資源の編集にあり リノベーションによるまちづくりからみた観光政策術
地域資源を最大化していくまちづくりの時代へ
リノベーションによるまちづくりとは、地域固有の資源を再発見しながら相互に最大化して、豊かな暮らしを自分たちの手で築いていくことであり、北九州からはじまり今や全国各地へと広く伝播しているまちづくりの思想と手法である。
私たちのまわりに目に余るほどたくさんある空き家や空きビル、ほとんど使われていない道路や公園、公共施設、これらすべての低利用・未利用の空間は、磨けば光る、潜在的な資源である。空間だけではない。地域ごとに固有にあるヒト、コト、モノ、トキ、カネは、これまで地域が長く築き上げてきた豊かな資源である。無いものねだりができた時代は終わった。無いものねだりから有るもの探しへ、そこにある地域資源にもう一度光を当てて、私たちの本来あるべき豊かな暮らしを私たち自身の手によって実現していく時代が今である。
有るものを探し、小さくとも自らの手で豊かな暮らしを実現させていく時代の開拓者たち。そのような人たちが育ち、出会い、そのまま実現へとつながる場、「リノベーションスクール」は、2011年8月に北九州で始まった。
第9回リノベーションスクール北九州での集合写真
このスクールには、遊休化してしまった実在の建物など種々の空間が持ち込まれる。全国から集まる受講生たちはグループに分かれ、3~4日間という限られたスクール期間内で、一流のプロたちの支援を受けつつ、それぞれが担当する案件の再生事業計画を立案する。そして最終日には、それら案件のオーナーやステークホルダーに向けて公開の場でプレゼンテーションを行う。もちろん持ち込まれる案件も、出てくる提案も多種多様。ただしすべての提案は、地域資源と向き合いそれらに光を当てようと、補助金に頼ることなく自らの手で実現させようとの共通の立脚点を持つ。
スクール後には、早速、提案内容の実事業化に向けて、新しい業態の開発や組織づくり、資金調達や事業運営の方法などが模索されていく。2016年3月で10回目のスクールを迎える北九州では、すでに18件が事業化されている。これらの効果は、新規雇用者400名の創出、拠点エリア内の歩行量3~4割増として着実に表れている。これまで全国各地で二十数回開催されているスクールの受講生数は延べ1,000人ほど(2015年11月現在)、リノベーションスクールを通じたリノベーションによるまちづくりの輪は今も全国に広がっている。
これらリノベーションによるまちづくりの思想と手法から、各地の観光政策がたどるべき道が見えてくる。
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