観光政策のコツは、地域資源の編集にあり   リノベーションによるまちづくりからみた観光政策術

徳田光弘九州工業大学大学院准教授

2015.11.16福岡県

唯一性と遍在性、持続性と一過性、観光政策のジレンマ

(そもそも観光ってなんだろう?)

 観光政策そのものに対して、私たちがいくばくか感じるゾワゾワとした違和感。まず、観光政策へのヒントを見つける前に、観光そのものについて今一度整理してみよう。

 まず、観光への指向を大きく二つの軸で捉えてみる。ひとつは日常性と非日常性、もうひとつは唯一性と遍在性(広くあちこちにある)の軸である。

観光の指向性に関する3つの軸
観光の指向性に関する3つの軸

 わかりやすい観光は、雑多で窮屈な日々の生活から遠く離れられる非日常性、そして壮大な自然や圧倒的な歴史に裏打ちされた唯一性への指向である。人が来るから市が立つ、富士山のご来光、京都の寺社仏閣、日本国内にも数多くの観光資源が存在する。

 他方、おそらくこのウェブサイトのビューアーの多くも気になる観光は、非日常性というよりは日常性、当たり前だと思っていた地域での暮らしや営みの中に、そこでしかできない価値や体験を付与していく唯一性への指向である。地域固有の自然や歴史、文化や慣習、そして、その地域の住まう人々といった地域資源の活用。市が立つから人が来る、地域の固有性を生かした○○ツーリズムや多彩な集客イベントが、近年、手を替え品を替えて全国各地で取り組まれている。

 このような非日常性や日常性に裏打ちされた唯一性は、時として遍在性へとシフトする。各地の温泉旅館やリゾートホテル、競合の乱立、観光ツアーという業態そのもの、それらの一部もここに当てはまるだろう。遍在性への指向は、どこでも一定のサービスが得られる安心感をサービスの受け手側にもたらしてくれる反面、ともすれば唯一無二の「ここに来たい」価値、唯一性を損なってしまうこともあるから注意が必要だ。

 さらに、観光への指向にもうひとつの軸を加えるとすれば一過性と持続性である。当然ながら、たゆまない変化と、その中で見えてくる変化しないものの両立によって、初めて持続性は担保されていく。これは、決して「観光」という枠組みの中だけで成せるものでなく、地域の中で脈々と育まれるものであろう。

 振り返って、観光政策への違和感の種は、「観光」だけが地域という体系から切り取られることで、自ら孤立し、単一目的化していく不安がひとつ。観光という「政策」がしばしば落ち入りがちな一様さ、すなわち遍在性への過度な偏りへの懸念がもうひとつ。そして、政策の背景にある「補助金」というカンフル剤の副作用、切れると終わってしまう~夏草や兵どもが夢の跡~のような一過性と、補助金への依存体質から抜け出せない持続「不可能性」への危惧だろう。

 それでは観光政策は、どのように唯一性と遍在性のジレンマをバランスさせ、地域の中で持続性を確立していくべきだろうか。

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