観光政策のコツは、地域資源の編集にあり   リノベーションによるまちづくりからみた観光政策術

徳田光弘九州工業大学大学院准教授

2015.11.16福岡県

地域資源を編集していくこと

ホステル&ダイニング「タンガテーブル」
ホステル&ダイニング「タンガテーブル

 観光になぞらえて、リノベーションスクールの事業提案から生まれたホステル&ダイニング「タンガテーブル」(2015年9月オープン)を紹介しよう。

 対象となった案件は、北九州の玄関口、小倉駅から南に徒歩10分、魚町アーケード商店街の先にある雑居ビルの4階である。東側には神嶽(かんたけ)川を挟み、あまり知られてはいないが北九州の台所と言われる「旦過市場」が広がる。フロアの大きさは180坪、学習塾が撤退した後はコンクリートがむき出しのまま放置されていた。96万都市の中心市街地内にあるとはいえ、人口減少が進みゆく他の地方都市と同様に、この空きテナントを埋めるのは厳しい。

 受講生から発表された提案は、このビルの目下に広がる、旦過市場にある豊かな食材や食文化の息吹を、この地域が持つ潜在的な資源と捉えること、この地域には当たり前な日常を「宝」と見立てるものであった。受講生は宣言した。「ホステルとダイニングが融合した事業によって、訪れる人たちが旦過市場の豊かな「食」を囲めるテーブルのような場をここに実現する」と。プレゼンテーション会場全体がワクワク感でいっぱいになった。

 飾られていない日本各地の本当の文化に出会いたい国内外の観光客や、いつも同じようなホテルに飽き飽きした出張中の若手ビジネスマンに、旦過市場の食材を使った料理とテーブルで生まれるコミュニティとふかふかのベッドを、ホステル&ダイニング「タンガテーブル」という業態で安価に届ける。そうすることでこの場は、訪れる人々にとって、旦過市場への、北九州の豊かな文化へのチェックインの機能も果たすことになるだろう。この事業は、つまるところ今ある地域資源の見立てと「編集」によって生まれたのである。

 編集で最も大切なことは、だれに、なにを、どのように届けるか、さらに届けることで何が生まれ豊かになるか、これらをきっちりと見定めることである。前段をもう一度読みなおしてほしい。タンガテーブルはこれらすべてを明瞭にクリアしている。

 観光政策も同様である。地域資源の高度な編集能力が今まさに求められている。だれに、なにを、どのように届けるのか、これらの設定が明瞭であればあるほど唯一性は高くなり、不明瞭であればあるほど遍在性へと偏る。誰でも来れるは誰も来ないと思った方が良い。乱立する観光事業の中では特に、唯一性が損なわれやすいからだ。編集能力をもって地域個別固有の唯一解を導き出す。もし唯一性が欠けたまま遍在性を指向しても、そこに来る理由にはならないのである。

 そして、その観光政策によって何が生まれ豊かになるのか、持続性を担保していかなければ豊かな地域の未来はない。ではどうすればよいのか?

1 2 3 4

スポンサードリンク