街のゲストハウスが持つ、もうひとつの側面と地域での新しい役割 続「まちのゲストハウス考」

真野洋介東京工業大学環境・社会理工学院建築学系准教授

2017.09.27

街のゲストハウスが持つ、もうひとつの側面と地域での新しい役割 続「まちのゲストハウス考」
岡山奉還町商店街の奥深くに立地するゲストハウス「とりいくぐる」

はじめに ―「滞在」のかたちの変化とゲストハウス

 旅宿のひとつのかたちとして、ゲストハウスを選ぶ人が増えてきた。

 その背景には、価格や利用の手軽さ、サービスの多様性だけでなく、ゲストハウスの体験や滞在そのものの魅力、ユニークな建物や立地環境など、「滞在」のかたちの変化がある。個人ベースで自由に組み立てることができ、観光スポットや観光地をつないでたどっていくような旅のスタイルだけでなく、街での体験や場所、人との出会いなど、滞在そのものの質を重視した志向が生まれている。また、滞在先として選ばれる街も、代表的な観光地だけでなく、よりローカルで、極度に観光地化が進んでいない街や、観光地においても、観光スポットと少し離れた商店街や路地裏などが選ばれるようになってきている。

 一方、ゲストハウスの運営者も、移住者やUターンしてきた若い世代など、まちに対する新しい視点を持ち、地域で独特なコミュニケーションを取りつつ、宿泊客と地域の人々を結び、独自のネットワークを切り拓いている。このような、ゲストハウスのもうひとつの側面と地域に対するインパクトについて考えてみる。

街のゲストハウスが持つ、もうひとつの側面と地域での新しい役割 続「まちのゲストハウス考」
岡山奉還町商店街に立地するもうひとつのゲストハウス「KAMP」

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