ワインツーリズムの発展とその地域的差異

菊地俊夫首都大学東京都市環境科学研究科教授

2015.12.16

新興のオーストラリアのワインツーリズム

【写真2】オーストラリア・ハンターバレーの大規模ワイナリーにおけるワインツーリズム(2014年4月筆者撮影) 広い敷地内にはワイナリーやワインショップはもちろんのこと、レストランやホテル、レクリエーション施設や土産品店などがワインのテーマパークのように配置されている
【写真2】オーストラリア・ハンターバレーの大規模ワイナリーにおけるワインツーリズム(2014年4月筆者撮影) 広い敷地内にはワイナリーやワインショップはもちろんのこと、レストランやホテル、レクリエーション施設や土産品店などがワインのテーマパークのように配置されている

 オーストラリアのハンターバレーは、ニューサウスウェールズ州の東海岸中央部に位置し、ポコルビン、ブローク、ラブデール、シングルトン、ウォロンビー、セスノックの6つの地区で形成され、2014年現在、147軒のワイナリーが立地している。

 1990年代以降、ハンターバレーのワインの評価が高まるにつれて、産地を訪れてワインを購入しようとする人びとが多く来訪するようになった。ハンターバレーが大都市(シドニー)の近郊に位置していることも、ワインを購入する多くの人びとを惹きつける大きな要因になっている。結果的には1990年代以降、ワイナリーの立地が増加し、ワインツーリズムが発達するようになった。

 ハンターバレーのような新興のワインツーリズムはワイナリーの機能分化で特徴づけられる。ハンターバレーのワイナリーは規模と観光アトラクションの種類に基づいて小規模、中規模、大規模の3つに類型化できる。

 小規模ワイナリーはワインの販売を行っているが、ワインツーリズムに参加していない。

 中規模ワイナリーは特徴的なワインを生産し、常連客や特約客を相手に販売促進を目的にしたワインツーリズムを行っている。

 他方、大規模ワイナリーはワイン生産とともに、宿泊やレストラン、および土産物店やスポーツ施設経営などの複合的な観光アトラクションを備えており、ワイン生産に関するテーマパーク的な施設になっている【写真2】。それらの施設に基づいてワインツーリズムが不特定多数の観光客を対象に展開している。

 つまり、新興のワイン産地では、さまざまなアトラクションを内包したテーマパーク型のワイナリーがマスツーリズムに対応して、ワインツーリズムの中心的な担い手になっている。

著者プロフィール

菊地俊夫

菊地俊夫首都大学東京都市環境科学研究科教授

筑波大学大学院地球科学研究科修了後、東京都立大学理学部助教授を経て、現職。理学博士。専門は農業・農村地理学、観光地理学、自然ツーリズム学。公益社団法人日本地理学会理事長、一般財団法人日本地図センター理事、国土交通省小笠原諸島振興審議会委員、日本ジオパーク委員会委員などを務める。

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