主事から副町長へ、吉弘拓生さんの仕事のしかた(後編)群馬県下仁田町 「やりたい」を後押しする「現場スピリット」

吉弘拓生下仁田町副町長

2016.10.04群馬県

今年8月21日に下仁田中学校で行われたNHK夏期巡回ラジオ体操会(下仁田町提供)
今年8月21日に下仁田中学校で行われたNHK夏期巡回ラジオ体操会(下仁田町提供)

 福岡県うきは市の職員(肩書は主事)として森林セラピーの取り組みをしていた吉弘拓生さんは2015年4月、人事交流により、33歳という若さで群馬県下仁田町副町長に就任した。前編では、うきは市での取り組みを紹介した。後編では副町長就任から現在までの取り組みを追う。

「あきらめている感じ」の役場の「劇薬」に

主事から副町長へ、吉弘拓生さんの仕事のしかた 前編・後編
吉弘拓生下仁田副町長

 吉弘:(2015年の)3月3日くらいに市長室に呼ばれて、下仁田町との人事交流の話があると初めて聞かされ、「頑張ってね」と言われて「え」と。そのときは副町長とは聞いていなかったのですが、その後群馬の新聞で副町長にという報道が出ました。普通は中央官僚が行くイメージがありましたが、基礎自治体から基礎自治体へというのはちょっと想像できない。それに、私はどちらかというと管理畑ではなく現場でやってきたので、なぜ私なんだろうと思いました。
 しかしそれまでに、責任が取れるというのはうらやましいと考えていたことがありました。全国にはやる気のある若手職員がたくさんいますが、上司が反対するんじゃないかなどと悩んでいる人が多いです。副町長は責任も発生しますが、自分が支えになって思い切りやれる職員がたくさん生まれるのはいいんじゃないかと思いました。

 吉弘さんは総務省地域力創造アドバイザーとして、それまでに5回下仁田町を訪れ、講演や勉強会の講師、打ち合わせなどを行っていた。

下仁田町はねぎとこんにゃくが特産品
下仁田町はねぎとこんにゃくが特産品

吉弘:下仁田町は東京という大きな市場が近くて、電車もバスも高速道路も便利でうらやましかったのですが、何となく職員に「あきらめている感じ」があり、アドバイザーとして来ている私も歓迎されていない雰囲気でした。また町民の皆さんと話をしていると、「こういうことをやりたいけれど誰に話したらいいかわからない」と言うので、「役場に話したらどうですか」と言うと、「そういうことをやっていいかわからない」と言われました。
 うきは市では、職員と住民がお互いに提案しあうなど、人口約3万人でも、お互いの距離が割と近いのです。人口8,000人ならもっと近いイメージがありましたが、実際は逆で、役場は役場、町民は町民という分厚い壁があり、議員なども加わって、お互いに相手が「やってくれない」と言っている、変なスパイラルに入っていました。最初は大きな違和感がありました。
 「やらなくてもいい」という雰囲気がずっとある役場内にやる気を起こさせるため、「劇薬として若いあなたを持ってきた」と、町長さんに言われました。

上町通りには歴史ある建物が混在する
上町通りには歴史ある建物が混在する

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