マーケティングから地域に観光の力を 下呂温泉観光協会

2016.08.01岐阜県

多様な主体による「誘致宣伝委員会」

 マーケティングでまず重要なことは「客観的なデータによる現状把握」だと瀧会長は話す。


「まちがどういう状態なのか見ないと、ただ着地型商品をつくっても無駄になる可能性があります」

 宿泊客等のデータは毎月10日締めで各施設から市に報告される。この調査は昭和41年から続くものだ。協会はそのデータの提供を受け、わかりやすい形に加工する。そして締日から1週間以内に「誘致宣伝委員会」の会議を開く。市や旅館組合、商工会、観光施設や、合併前の旧4町1村の観光協会などによる組織で、協会が事務局を務める。会議では国内外の情勢や県、JRなど国内各社の動きも確認する。

 こうしたマーケティングを始めたきっかけは、2011年3月の東日本大震災後の宿泊者数の落ち込みだった。当時協会の専務理事だった瀧会長は、市の協力を得て来客データを入手し、多方面に声をかけて誘致宣伝委員会をつくった。委員会ではデータをもとにプロモーションの計画を立て、協会を中心に実行した。協会では、プロモーションをマーケティングの一つととらえ、次の4つの柱から考えている。

①広告宣伝 テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ウェブなどの各種メディア
②パブリシティ 各種メディアで取り上げてもらう
③ヒューマンプロモーション(人的販売) エンドユーザー向けの「キャンペーン」、旅行社への「キャラバン」など
④セールスプロモーション クーポンやノベルティの配布など


「このときは、バランスを取りながら、やるべきことを書き出してやりきりました」

 すると約2カ月後、5月には前年の宿泊客数を超え、6月には前年同月を7,000人以上上回った。

 誘致宣伝委員会は毎月開催している。平成25年度は伊勢神宮式年遷宮、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の世界遺産登録、東京ディズニーランド開園30周年などが重なったが、宿泊客数を前年度比100.2%に伸ばした。また2014年9月には御嶽山(長野県、岐阜県)の噴火があり、数カ月間低迷したが、2015年3月には、消費税増税前の駆け込み需要があった前年同月に比べ106.9%にまで宿泊客数を伸ばしている。これらもマーケティングの成果だと瀧会長は話す。

 マーケティングの専門家はおらず、旅行会社からの派遣もない。「やれるところからやればいい」と瀧会長は話す。協会の若手職員には「本を読め、と言って勉強させる」という。続けるうちにマーケティングの精度が上がり、例えば今年度からは、下呂までの交通手段を国内と海外に分けて調べるように変えている。

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