マーケティングから地域に観光の力を 下呂温泉観光協会

2016.08.01岐阜県

観光の力で市民生活の質の向上を

 協会は今年4月に日本版DMO候補法人に登録され、下呂市では瀧会長を委員長とした「下呂市DMO委員会」を立ち上げた。DMOとしての今年度の事業は「下呂温泉スイーツ開発」「市内スタンプラリー」「メディア活用およびWEBプロモーション(無料Wi-Fiの整備が難しい山間部などでも使えるアプリ開発など)」「エコツーリズム全体構想」などで、すでにほとんどがスタートしている。

 力を入れている事業の一つが「エコツーリズム」だ。エコツーリズムとは「地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光旅行者に伝えることにより、その価値や大切さを理解してもらい、環境保全につながっていくことを目指していく仕組み」(環境省パンフレットより)。資源の保護、観光業の成立、地域住民の振興が3つとも達成されることを目指す。


「DMOは観光振興や地域振興を目指すものですが、下呂では環境保全も加えて、持続可能なエコツーリズムをやっていきたいです」

 こうした取り組みを進める上で大事にしているのが「地域主体」ということだ。


「“上から落とす”ようなやり方ではうまくいきません。地域主導で、地域の中から盛り上がっていかないと。人材もそのスピードで育てないと、お客さまに迷惑がかかります」

下呂温泉
下呂温泉

「下呂温泉は、温泉が一番の“ごちそう”ですが、歴史も文化もあまり強いとは言えません」と瀧会長は話す。そこで重要なのが周遊だ。県内のどこかを訪れ、下呂に泊まり、またどこかを訪れて帰る。市内の旧4町1村はもちろん、現在は中津川市との連携を進めており、恵那市、関市などとの連携も考えている。


「連携で楽しみが増えて、さらに魅力的なツアーを創出できます」

 連携の相手側にとっても客が増え、宿泊施設の不足を心配しなくてすむのが魅力だ。


「キャラバンのときには県内全ての資料を持参し、岐阜県を宣伝しています。昨年のアンテナショップ出店には、県内の市町村の人たちに来てもらい、仲良くなってもらって連携につなげる狙いもありました。市町村同士をつなげて、岐阜県の観光をリードしていきたいと思います」

 さまざまな施策を考える瀧会長には「目的は、観光による市民の生活の質の向上」という思いが貫かれている。その上で、


「DMOの機能を最大限に発揮して、世界のDMO先進地と肩を並べるくらいになりたいと思います」

 協会のこれまでの取り組みには日本版DMOと考え方が共通する部分が大きく、さまざまな点が参考になるだろう。また、日本版DMO候補法人としての機能を果たすことが、誘客につながりうることがわかる。可能性に満ちた日本版DMO制度を生かすことが求められている。

(取材・文/青木 遥)

1 2 3 4

スポンサードリンク