観光による地域活性化と「時間空間一致の法則」

小長谷一之大阪市立大学大学院・創造都市研究科教授

2013.05.01

地域活性化に「時間空間一致の法則」を

 観光の消費者志向が個人的趣味の分野にまで広がり、形態が小グループ化するニューツーリズムや、企画プロセスが発地のエージェントから着地である地元に近づく着地型観光などの新しい観光の潮流がでてくると、観光開発は地域づくり・まちづくりに近づいていく(小長谷ほか2012『地域活性化戦略』晃洋書房)。

 観光の主体が地元に完全に移ることは難しいが、たしかに地元型に重心がシフトしていく流れはあり、その場合、今後最大の問題は、資金不足である。いいかえると、コストをおさえて集客効果を高める=コストパフォーマンスの高い集客地域づくり手法がもとめられることになる。

 筆者の勤める大学院は、社会人向けの地域づくり・まちづくり大学院であり、これまでに社会人の専門家のみなさんと300近い成功事例を研究し、地域活性化の成功のための法則を参考文献のようにまとめているが、その中で非常に重要な補助手法として表記の「時間空間一致の法則」がある。

 小売・観光などの広い意味での集客産業が、他のビジネス一般やヴァーチャルな取引(eコマースなど)と異なる最大の特徴は、リアルな集客産業は、常に「お客に来ていただく=すなわち大きな空間的移動のコストを前払いさせてしまう」という大きなハンディを背負っている点である。

 お客からみると、効用に対して、このコストを最小化したい。逆に、一回来たら効用を最大化したい。何回も来訪するのではなく、一度いくだけで大きな満足=沢山楽しめることが大事である。

 そこで有効なのが「時間空間一致の法則」である。この法則で成功している例が非常に多い。

 1)テーマを統一してやること(ブランド化の最大原則は「simplicity」)

 2)回遊可能なコンパクトな地域範囲で行うこと

 3)同一日、時間に同期させてやること

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