コンテンツツーリズムと地域創造

岡本健奈良県立大学地域創造学部准教授

2014.01.01

コンテンツツーリズムとは

 2000年代後半ごろから、コンテンツツーリズムについての実践や研究が盛んになされている。
 コンテンツツーリズムとは、コンテンツを動機とした旅行行動やコンテンツを活用した観光振興、地域振興のことを指す言葉だ。この場合、コンテンツとは、アニメや漫画、ゲーム、映画、音楽といった楽しみのための情報財のことを意味している。

 最近の政策動向を見てみると、2013年6月20日には、観光庁、JNTO、経済産業省、ジェトロが共同行動計画として「訪日外国人増加に向けた共同行動計画」が発表されており、この中には、アニメやマンガの聖地への訪日を促すための情報発信が含まれている。

 同27日には、観光庁が「『今しかできない旅がある』若者旅行を応援する取組表彰」でアニメ『ガールズ&パンツァー』と連動した茨城県大洗町の取り組みに奨励賞を授与し、同年9月には日本のアニメ聖地を英語で紹介するウェブサイトを立ち上げている。コンテンツツーリズムを巡って様々な政策が打たれており、期待が高まっていることが見てとれる。

 こうした中、コンテンツツーリズムの課題としてよく挙げられるのが持続可能性と経済効果だ。大河ドラマのようなメジャーなコンテンツでもその効果はおおむね放映の前後2年間と限定的なものにとどまる。アニメ、それもオタク向けの作品で、その効果はいかほどのものか、というわけだ。

 しかし、筆者がこれまで調査してきたコンテンツツーリズムの事例からは、持続可能性や経済効果という問題も含めて、観光振興や地域振興の根幹に関わる重要なポイントがたくさん浮かび上がってきた。

 たとえば、長くアニメファンに愛される地域に共通することは「持続可能性」や「経済的利益」を目的として活動していないことが挙げられる。

 それらを中心に据えた取り組みが行われると、ファンは「アニメ製作サイドや地域サイドに利用されている」と感じ、インターネット上でネガティブなコメントが発信され拡散していく、いわゆる「炎上」と呼ばれる状態となり、地域に対する悪いイメージが広範囲に素早く広まってしまう危険がある。

 皮肉なことだが、持続の「ための」観光振興は持続しないし、取り組み自体が面白くないものになることが多い。

実践のポイントはどこに

 それではどこに焦点を定めているのか、それは、来訪者や地域住民がいかに楽しめるか、遊べるか、ここなのだ。

 コンテンツを契機として人々が地域を訪れ、そのことをきっかけに地域住民が活性化し、ともに心地よい「遊びの空間」を創りだす。それがネットを通じて拡散し、さらに旅行者が訪れる。訪れた旅行者は、その地域の人や文化の価値を知り、創造性を発揮して観光地を創造していく。旅行者と地域住民が、ともに地域創造を行うのだ。

 このような状況になれば、旅行者はお客様ではなく当事者となり、場合によってはその地に転居してくるまでになる。こうした展開になれば、おのずと持続可能性や経済効果もついてこよう。

 紙幅の都合で、事例や理論の詳細は、拙著『n次創作観光』をお読みいただきたいが、上記の他にも、コンテンツツーリズムの様々な事例は観光政策全般にとっての数多くのヒントをもたらしてくれる。ただ映像を使って誘客するだけの観光ではない。これからも目が離せない分野である。

岡本健(2013)『n次創作観光 -アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』北海道冒険芸術出版

著者プロフィール

岡本健

岡本健奈良県立大学地域創造学部准教授

奈良県立大学地域創造学部准教授。博士(観光学)。1983年奈良県生まれ。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻博士後期課程修了。専門は、観光社会学、コンテンツツーリズム学、ゾンビ学。現在、ウェブサイト「cakes」にて「ゾンビ10番勝負」を週刊連載中。
http://researchmap.jp/t-okamoto/

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