コンテンツツーリズムの成否の分かれ目1 “ブーム”になったコンテンツツーリズム

増淵敏之法政大学大学院政策創造研究科教授

2015.01.19

アニメによる観光行動が地域活性化と結びつく

 近年、コンテンツツーリズムが注目されるようになった。やはり中でもアニメツーリズムの地域での施策展開によるものが大きい。従来、コンテンツツーリズムは観光行動の一つとして存在していたものだが、近年、アニメツーリズムが、アニメの「聖地巡礼」と称され、その観光行動が地域の活性化と結びついてきたことで注目が集まったといえよう。

 埼玉県久喜市(旧鷲宮町)の『らき☆すた』から始まって、滋賀県近江八幡市の『けいおん!』、埼玉県秩父市の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、石川県金沢市の『花咲くいろは』、茨城県大洗町の『ガールズ&パンツァー』などが地域活性化の成功事例としてよく挙げられている。

 最近では領域を超えた研究者たちも意欲的な調査、考察を行ってきている。これも観光の多様化の表れと言えよう。特に地域の活性化と結びついた点に新奇性があったのかもしれない。

 そこで着目されるのは、もちろんアニメ作品の観光創出のメカニズムということになる。風呂本氏の論文(2012)では、大きく内発的発展と外来型発展と分けて、前者を『朝霧の巫女』で有名な三次、後者を『たまゆら』の竹原の事例を説明している。

 また福富氏等の論文(2013)では自然発生型、地域主導型、内部高揚型と分類している。自然発生型の代表的な事例としては『らき☆すた』の鷲宮(現久喜)、地域主導型は『輪廻のラグランジェ』の安房鴨川、内部高揚型として株式会社ピーエーワークス(富山県南砺市)が行った『富山観光アニメプロジェクト』を挙げている。

 確かにアニメツーリズムと地域振興という関わりを捉えていく際に、地域の主体間関係が構築するメカニズムを明らかにすることは極めて重要ではあるが、分類化、類型化は難しい作業であるといえよう。これはコンテンツ関係の調査、研究に付きまとう課題である。

 つまり状況の背景に存在する情報がどこまで開示されているかということである。基本的に公式の報告書めいたものがないことが多いので、精度に欠ける、もしくは実態に欠ける研究成果になってしまうことも多々、あるに違いない。

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