コンテンツツーリズムの成否の分かれ目1 “ブーム”になったコンテンツツーリズム

増淵敏之法政大学大学院政策創造研究科教授

2015.01.19

無秩序、無軌道な即時的施策も見られる

 しかしその反面、ここ最近ではアニメツーリズムの失敗事例も取り上げられるようになってきた。

 さて成功と失敗は明確な評価基準がないままに議論されているように見える。集客や経済効果等がよく登場する指標ではあるが、例えば境港の「妖怪の町」づくりに見られるような、長期的な施策展開を行ってきたところでは、さまざまな視点からの評価が行えるが、アニメツーリズムを検証するためにはまだ日が浅いということでもある。

 ただ盛り上がり過ぎた嫌いもあるに違いない。成功したとされる事例を参考に各自治体も随分、施策展開を講じてきた。ブームは実態と乖離した際に終息の方向に向かう。無秩序、無軌道な即時的施策が増えたということでもあろう。施策の数が飽和してしまったように見える。これはゆるキャラの施策展開にも通じる点があるに違いない。

 またアニメツーリズムはどちらかというと若年層を対象に捉えられてきた。とくに「ヲタク」文化とともに語られることが多かった。

 しかしアニメツーリズムの持つ本質はその年齢層に特化したものではない。『ガンダム』『エヴァンゲリオン』などの世代にも目を向けるべきだろうし、今後の課題はそこにある。たまたま現在はアニメのデジタル化によって背景の実写化が進み、それがアニメファンの観光行動に結びついて現象が生じているのだが、これを一つのアニメ文化の理解への契機と捉えることが肝要だ。

中期的な視座で施策の構築を

 もちろんアニメツーリズムが一過性のものになるという危惧も幾分、それによって解消されるに違いない。

 現在は地域の活性化施策としてアニメツーリズムは注目されているが、ただそれはあくまで施策の一つであって、いかに継続性を持たせるのかが議論すべき点だ。またアニメも地域資源のひとつに過ぎず、他の地域資源との結節も重要だと考えられる。観光マスタープランのあくまでも一部だという捉え方をしていくべきだろう。しかしやはり大切なのは、アニメ文化の地域での理解促進になる。

 そしてコンテンツツーリズムは、もっと幅広いジャンルで捉えていくことも必要であろう。アニメをはじめとする映像系のコンテンツはユーザーへの訴求力が高いが、小説や音楽などもその範疇に入る。

 また、スローなコンテンツツーリズムへの注目も重要だろう。まず地域の特性を精査、斟酌し、そこに無理なく対応できるコンテンツを選択して、観光施策を考えていくという方法も考えてみる必要があるに違いない。

 一般的に拙速に行動してしまう傾向が個々の地域に見え隠れする。もっと落ち着いて中長期的な視座での施策構築が不可欠になってきている。

(2へ続く)

コンテンツツーリズムの成否の分かれ目2 持続のカギは地域でのコンテンツ創出

著者プロフィール

増淵敏之

増淵敏之法政大学大学院政策創造研究科教授

法政大学大学院政策創造研究科教授、コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会理事。著書に『物語を旅するひとびと』(2010、彩流社)、『路地裏が文化を生む!』(2012、青弓社)など多数。

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