エコツーリズムが照射するもの 足元からの観光立国へ

海津ゆりえ文教大学国際学部国際観光学科教授

わが国はエコツーリズムの先進国

 エコツーリズム推進法が2008年に施行されて今年で5年目を迎えた。同法は、観光立国推進の一つの柱として、地域のエコツーリズムへの取り組みを後押しする目的でできた世界最初の法律である。

 2013年6月までに、埼玉県飯能市、群馬県みなかみ町、沖縄県渡嘉敷村・座間味村の3地域が同法に基づく認定地域となった。認定を受けるためには地域で協議会を設置して協議を重ね、構想書をまとめて審議を受ける必要がある。時間がかかり、とんとん拍子で認定地域が増えるというわけにはいかないようだ。

 エコツーリズムは、自然や文化などの地域の「宝」を守りながら活用し、地域振興に貢献する観光の概念である。
 成長著しい観光ビジネスと自然保護の両立に課題を抱えていた東アフリカや中南米等の自然地域で1970年代後半に萌芽し、国際自然保護連合(IUCN)などの国際機関等を介して世界に伝えられ、国連が2002年を「国際エコツーリズム年」に定めたことから各国が取り組むところとなった。

 日本でのエコツーリズムの黎明期は1990年初頭である。環境庁(現・環境省)や自然保護団体、旅行業界団体等が着目し、西表島や小笠原、屋久島等で実践が始まった。
 2004年からは環境省がエコツーリズム推進事業を実施し、モデル地域の選定やエコツーリズム大賞の創設等が行われ、地域振興に課題を抱える今日の社会的背景も受けて、国立公園等の自然豊かな地域のみならず、観光とは無縁だった里山や里海へも普及していった。

 冒頭に挙げたエコツーリズム推進法はその果実である。議員立法で2007年に成立し、環境・国交・農水・文科の4省が共管する。今や日本は世界有数のエコツーリズム先進国である。

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