地域の価値の向上と神聖性の再獲得こそが、聖地巡礼を終わらせない鍵となる

鷲谷正史目白大学メディア学部メディア学科准教授

2019.08.21東京都

「聖地巡礼」ブームの現在地

地域の価値の向上と神聖性の再獲得こそが、聖地巡礼を終わらせない鍵となる
鷲宮神社の絵馬かけ所・無数の「痛絵馬」が見られる

 コンテンツツーリズム、いわゆる「聖地巡礼」で地域を盛り上げようと、各地では、さまざまな取り組みが展開されている。

 「聖地巡礼」が新語・流行語大賞になったのは、2016年のこと※1。映画『君の名は。』の大ヒットに伴い、それまでは、知る人ぞ知る現象であったマンガ・アニメを活用した地域興しの知名度が一気に広がった。『らき☆すた』と鷲宮、『ガールズ&パンツァー』と大洗の事例が紹介され、柳の下のどじょうを狙うかのように、日本各地で「我が町の『聖地巡礼』紹介競争」が巻き起こったのは記憶に新しい。

 百花斉放、一時は盛り上がった全国各地の聖地巡礼も、年月が経過するにつれて、観光客が減少したり、取り組み自体がなくなってしまったりという話も多く見受けられる。

 聖地巡礼のブームが落ち着きつつある時、地域の方々、自治体・観光関係者は、どのような方策を取るべきなのか。オタクカルチャーの聖地巡礼先として、いち早く注目され、その分早く途絶えた挙げ句、近年になって復活を遂げて古典的な存在となりつつある「トキワ荘」に着目して考えてみたい。

※1 「ニュースリリース」『生涯学習のユーキャン』https://www.u-can.co.jp/company/ news/1199301_3482.html (2019年8月閲覧)

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