観光地じゃないからこそ面白い! ローカルな情報を自分たちで世界に発信する「ウィキペディアタウン」

青木和人オープンデータ京都実践会、Code for 山城代表

2018.10.09京都府

ウィキペディアタウンでのポイント、注意点

資料を基に書く、コピペしない

 残念ながら、ウィキペディアには、まだまだ本人の思い込みで書かれているような記事があることも事実です。
 そこで私達はウィキペディア執筆に際して、自分が思ったことや伝え聞いたことをそのままを書くのではなく、地域資料を調べた上でそこに載っていることを、資料の出典を明記した上で、ウィキペディアに執筆する方法をレクチャーしています。

 出典を明記して検証可能性の高い記事執筆をすることで、ウィキペディアの信頼性をより高めていくことができるでしょう。
 また、執筆の際には、資料の文章をまるまる写すような作業、いわゆるコピペをして、資料の執筆者の著作権を侵害しないように、資料の内容をまとめて記述する方法を皆さんにお伝えしています。

百科事典であり広告ではない

 最近、作り始めた観光地の特産品のウィキペディアページを作りたいというような要望をお聞きすることもあります

 ただし、資料を基にせず、出典を示さず特産品のページを作成した場合、最悪、ウィキペディア管理者からページを削除される恐れがあります。

 ウィキペディアは百科事典ですので、特産品が百科事典に収めるのにふさわしい特筆性を有すること、つまり社会的に認知されている必要があります。
 それを示すためには、特産品が行政の観光資料だけでなく、それ以外の複数の資料に記述してあることを確認し、それらの出典をきちんと明記して、執筆する必要があります。そのようなレクチャーもさせていただいています。

行政、地域の歴史まちづくり団体との連携

 ウィキペディア記事を執筆するためには地域資料が必要になります。

 そこで地域の公共図書館と連携して、地域資料の選書、貸出の協力を得ることができると良いです。公共図書館側も地域資料を地域住民に活用してもらう新たな活用事例になることから、積極的にウィキペディアタウンに取り組み始めているところも登場しています。

 また、まちあるきに際しては、これまで連綿と地域で活動してこられた歴史・まちづくり団体さんやボランティアガイドさんと協働してウィキペディアタウンを開催できると、とても良いです。

 さらに、地域のITサポーターのような方々のご協力を得られるとパソコンの苦手な参加者さんへのサポートをいただけるのでとても助かります。
 特にパソコンが苦手な高齢者の方も、写真撮影が趣味で得意という方が多いです。まちあるきでの写真撮影やこれまで撮りためた地域の写真を提供いただくような参加の仕方もあります。
 また、まちあるきで地域の昔の話をしていただくだけでも十分です。パソコンを使ったウィキペディア執筆だけがウィキペディアタウンではないのです。

観光地でない地域でこそウィキペディアタウンは有効

 2014年2月に開始したウィキペディアタウンも、4年を経て2018年10月1日現在で、主催、協力したウィキペディアタウンは43回、京都府をはじめとする関西地域、愛知県、富山県、岐阜県、岡山県、鳥取県、香川県の地域に上ります。

 これまでウィキペディアタウン活動を続けてきて、ウィキペディアタウンは、観光地でない注目されていない地域でこそ、地域情報の発掘のしがいがあり、有効だと思うようになりました。

 そして、地域住民と共にそれらの地域情報をインターネットフリー百科事典ウィキペディアで、広く伝えていくことで地域の観光につなげることができると考えています。

 最近は私たちだけでなく、公共図書館をはじめとする地方自治体さんや継続的にウィキペディアタウンを開催される地域団体さんも、日本の各地域で登場して来られました。とてもうれしく思っています。

 私たちの夢は日本の北の端から南の端まで、日本の津々浦々の地域を訪問してウィキペディアタウンをすることです。
 地域の歴史・文化情報を地域住民のみなさんと一緒に発掘して、ウィキペディアで情報発信して、世界中の方に日本の知られざる地域情報を知ってもらうお手伝いをしたいと思っています。

 もし、自分の地域でもウィキペディアタウンをやってみたい!と思っていただけたら、是非、ご協力させていただければと思います。

(了)

<参考文献>
青木和人(2015)「公共図書館を情報発信拠点とした市民参加型オープンデータ作成イベントの参加者属性分析」.じんもんこん2015研究発表論文集.2015. pp145-152.
青木和人(2017)「地域資料デジタルアーカイブに市民参加型ウィキペディアタウンが果たす意義」,デジタルアーカイブ学会第1回研究大会発表論文集,電子版.
Code for 山城「第1回 精華町ウィキペディア・タウン
国立国会図書館 カレントアウェアネス-E No.313 2016.10.20 E1852「ウィキペディア・タウン by京都府立南陽高等学校
Code for 山城「第2回 和束町ウィキペディア・タウン

著者プロフィール

青木和人

青木和人オープンデータ京都実践会、Code for 山城代表

京都府立大学公共政策学部講師。
博士(文学)。立命館大学大学院文学研究科地理学専攻博士後期課程修了。
専門領域は地理情報科学、オープンデータ、社会情報学。
地理情報システム、オープンデータを始めとする行政情報化コンサルティング業務に携わる一方、公共図書館を情報発信拠点としたウィキペディアタウン活動を主宰する。

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