観光客の安全を確保するために 津波避難対策の検討を事例に
事前の準備で効果的な避難体制を
災害発生時には、情報の提供のあり方によって、人的な被害に大きな差違が生じることは、東日本大震災においてもみられたことである。
事前からの対応準備としては、情報提供のあり方だけでなく、観光客の誘導方法、観光客の人数規模と状況に即した適切な避難路と避難場所を総合的に検討しておかなければならない。また、ここでは触れられなかったが、外国人観光客や聴覚障がい者の方々等への伝達方法も含めて準備しておくことも必要である。これらを定めておくことによって、いざ大規模な地震が発生したときにも、より効果的な避難体制をとれるようになる。
そのためには、従業員の役割を明確にしておくとともに、それらを確認するための訓練を日常的に実施しておくことも求められる。
大きな地震が発生し、大津波が来襲するような状況になったとしても、犠牲者を出さず、悲劇の場所とならないようにすることは観光客を迎える立場としての責務である。
(注1)参考文献
Mileti, D.S. and Sorensen, J. H. (1987): Natural hazards and precautionary behavior, Taking care: Understanding and encouraging self-protective behavior, Cambridge university press, pp.189-207.
■著者プロフィール
東京都立大学大学院都市科学研究科修士課程、同博士課程を修了。和歌山大学防災研究教育センター特任准教授、徳島大学環境防災研究センター特任准教授、人と防災未来センター研究主幹などを経て、2016年4月から現職。
専門は減災システム、防災計画、災害復興、リスクマネジメント。
主な研究テーマは「広域災害に対する効果的な災害対応システムに関する研究」「都市・地域の減災性能の概念化と実践の方法論に関する研究」「災害発生後の復旧・復興過程と支援方策に関する研究」。この他、地域と連携して災害対策を検討する活動に従事している。
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