旅行者から見た魅力ある世界遺産とは? キーワードは3つの「M」
Motenashi――旅人を驚かす仕掛け「もてなし」
2つ目はもてなし(Motenashi)です。「仕掛け」と言っても良いでしょう。
群馬県の富岡製糸場が今年、世界遺産に登録されたこともあり、産業遺産ツーリズムが注目されています。その最先端は、世界に先駆けて産業革命を成し遂げたイギリス。世界初の鉄橋のある「アイアンブリッジ峡谷」に始まり、鉱山景観、紡績工場、製鉄所など多くの建物が世界遺産に登録され、観光に生かされています。
その一つ、ウェールズ地方の「ポントカサステ水路橋と水路」は、石炭を運ぶためのナローボート(細長い船)が行き来できるよう造られた運河です。今は観光用で、ボートツアーが人気です。驚いたことにキッチンやベッドが装備されたボートもあり、30分ほどの講習を受ければ1週間単位で貸し出してくれます。水路は細く、ボートは人の歩く速さで進むので初心者でも運転できるということ。なんと優雅な旅でしょう。
ポントカサステ水路橋と水路を通るナローボート
スコットランドにある紡績工場の町「ニュー・ラナーク」では、工場の建物を改装したホテルがあります。同じく工場の建物を活用した博物館では、昔の紡績機を実演するほか、テーマパークにあるような2人乗りのライドに乗って、工場の歴史や労働者の暮らしを3Dで紹介するという仕掛けまでありました。英語が分からない子どもも大喜びです。世界遺産の建物の中にこんなものがあるなんて。
国によって文化財保存の考え方は違いますが、可能な範囲で文化財を活用し、魅力を伝える工夫をした結果なのでしょう。理解が難しいと思われがちな産業遺産が、家族で楽しめる場所になったのです。
ニュー・ラナークの工場跡。左下の建物がホテル
「こんなのがあったらいいな」を実現することが、旅を面白くします。多種多様な「おもてなし」は、旅人達に想像以上の楽しみや驚きとして刻み込むことになります。
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