旅行者から見た魅力ある世界遺産とは? キーワードは3つの「M」

久保美智代旅する世界遺産研究家、日本イコモス国内委員会会員

2014.11.17

Meet――旅を印象付ける「出会い」

アイット・ベン・ハドゥで、ベルベル人の宿の人と
アイット・ベン・ハドゥで、ベルベル人の宿の人と

 1つ目は出会い(Meet)です。旅の印象の良し悪しを考える時、「人との出会い」が大きく左右します。

 アフリカ大陸北西の乾燥地帯に「モロッコで最も美しい村」と称えられる日干しレンガの集落「アイット・ベン・ハドゥ」があります。私は、この世界遺産の村にあるベルベル人の宿に泊まりました。到着すると、家族総出で、地元のミントティーで迎えてくれました。夜は満天の星空を見上げ、一緒に流れ星を見つけた時の笑顔は今でも忘れられません。

マテーラでは、バラのプレゼント
マテーラでは、バラのプレゼント

 イタリア南部の町「マテーラ」は、無数の洞窟住居が世界遺産。その一つの洞窟ホテルにチェックインした時、スラリとしたフロントの男性から真っ赤なバラが1輪プレゼントされました。誕生日でもないのに! すっかり舞い上がり、たちまち印象はアップしました。

 中欧ハンガリーにあるワイン産地の世界遺産「トカイ地方」を訪れた時のこと。情報が少ないので登録地点を地図で探し、集落から少し離れた丘に、盛り土で固められた古墳のようなものが並ぶ場所を見つけました。行ってみると、それぞれの“古墳”には入り口があり、施錠されていました。中は薄暗く、奥へ続いている感じです。すると偶然、幼い息子が開いている入り口を一つ見つけ、中に駆けて行きました。後を追うと、奥には大きなワインの樽が! ここは個人のワインセラーだったのです。中にいたおじさんは、突然の来訪者である私にそのワインを振る舞ってくれました。その誇らしげな表情から、この国に根付いてきたワイン文化の奥深さを知りました。

トカイ地方では、突然の来訪者(私と家族)と記念写真
トカイ地方では、突然の来訪者(私と家族)と記念写真

 旅の面白さの一つは、その国独自の文化や風習を知ることにあります。そのためには、地元の人と出会い、触れ合うことが何より重要です。予定調和の旅で満足するのではなく、こんな偶然の出会いのある観光が、もっと旅を魅力的にしてくれるでしょう。

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