外国人観光客にわかりやすいサイン ピクトグラムの使い方

本田弘之北陸先端科学技術大学院大学教授

2018.01.19

外国人観光客にわかりやすいサインピクトグラムの使い方
左段一番上がスウェーデン、真ん中がチェコ、下が日本、右がデンマークで見かけたサイン。海外の空港や駅ではピクトグラムに文字を併記せず、ピクトグラムだけで伝えている

外国人観光客の「ことばの壁」を低くする

 日本にやってきた外国の人たちが、もっとも苦労することが「ことばの壁」であることはいうまでもありません。日本語ということばは、日本国内ではどこでも完璧に通じる反面、日本国外ではほとんど使われることがないという特殊なことばだからです。だから、外国人観光客にとって日本語は、ある意味で日本らしさの象徴でもあります。でも、自由に観光を楽しみたいときに、自分たちの行動を妨げる言語障壁にもなります。したがって、この「ことばの壁」をできるだけ低くして、彼らが、迷わず、スムーズに、安心して歩ける街をつくることが、大切な「おもてなし」となるのです。

「ことばの壁」を解消する方法というと、多くの人たちがまず考えるのは「外国語ができる人を準備する」ということのようです。観光の仕事をしている人が外国語を学ぶとか、観光案内所に外国語ができる人を配置するといったことです。

 このような人による「おもてなし」も重要なのですが、もっと重要なことは、日本語がわからない人でも理解できるようなサイン(看板・掲示)を提示することです。というのは、外国人観光客といっても、その行動パターンが日本人観光客と大きく異なっているわけではないからです。

 日本人観光客の多くは、事前にガイドブックやインターネットを見て行きたいところを決めておき、現地についたら、街角のサインに従って自分の目的地へ行くのが普通です。外国人観光客の行動もそれと同じです。日本への観光客の増加とともに、さまざまな言語で日本の見どころを紹介するガイドブックやインターネットサイトも増え続けています。ほとんどの人は、事前にそれを見て行きたい場所を決めてきます。ですから「もてなす」側で準備すべきものは、目的地がどこにあるかを示す公共サイン(誘導サイン・位置サイン)の設置である、ということになります。

多言語サインはいつまで役に立つか?

 さて、ことばの壁を低くするためのサイン、というと、多くの人が考えるのが、多言語で表記されたサインでしょう。現在、日本では日本語の他に英語と中国語と韓国語が併記された「標準4言語サイン」が数多く見られます。このような多言語サインは、どの程度役に立つのでしょうか?

 日本政府観光局(JNTO)のHPを見ると、現在の訪日客の3分の2が中国語と韓国語を話す国・地域の人たちでしめられています。したがって、現在のところ「標準4言語サイン」は、かなり役に立っているのではないかと思われます。しかし、これはあくまで「今のところ」でしかありません。というのは、今後も訪日客の構成比率が同じように推移するとは考えられないからです。

 日本を訪問する観光客は、今後も増加していくでしょうが、その増加分は、新しい国・地域からの訪問者となることが予想されます。世界のさまざまな地域からお客さんが来るようになれば、中国語や韓国語を話す観光客の絶対数は減らないとしても、比率は低下します。その場合、新しい多言語サインをどのように準備すればいいのでしょうか? 標準4言語を、増えていくお客さんにあわせて、5言語、6言語…と増やしていくことが可能でしょうか?

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