地域と歩む一歩が、生きる道を拓く。「東栄まちあそび塾」を仕掛ける伊藤拓真さん

2017.11.24愛知県

近年、日本版DMO制度の中で地域の「稼ぐ力」を引き出す視点が重視され、観光による地域活性化を目指した取り組みについても、事業によって「稼ぎ」、継続的に運営する仕組みをつくることが以前にも増して重要視されている。しかし、地域に貢献するのは「稼げる」事業だけなのだろうか。
愛知県東栄町に住む22歳の伊藤拓真さんは、地域の未来を考えたイベント開催を志しながらも、そこで自分がどう生計を立てて生きていくのか、なかなか見通せずに悩んでいた。しかし、考えながらも動き続け、地域で生きる道を拓きつつある。

DSC_0294伊藤拓真さん

東栄町で自分にできることは

 伊藤さんが住む東栄町は、愛知県の北東部にある人口3300人の山あいのまちだ。お茶などの農業や養鶏などがさかんである。また町の人が大切に受け継いでいるのが、40種以上の舞を、夜を徹して舞い続ける「花祭」だ。11月上旬から3月上旬にかけて町内11カ所で開かれ、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。

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御園地区の花祭の鬼(写真提供:一般社団法人奥三河観光協議会)

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御園地区の花祭に多くの人が参加(写真提供:一般社団法人奥三河観光協議会)

 伊藤さんはここで生まれ、18歳まで育った。高校を卒業すると「これという目標があったわけでもなく、なんとなく」名古屋市の大学に進学し、町を離れた。
 しかし帰省時に、合併して閉校した母校の小学校を目にしたことがきっかけとなり、このままでは町全体が廃れてしまう、自分にできることをしたいと考えるようになった。まちづくりについて学びたいと、大学2年を終えて休学し、石川県七尾市のまちづくり会社、株式会社御祓川(みそぎがわ)のインターンを半年間務めた。

 その中で、御祓川は隣接する志賀町で新しく始まるオンパク手法を使ったイベント「西能登遊楽祭 里浜TRY博」のコーディネーターを務めていた。
 オンパク手法とは、地域の資源や人材を活かすための小規模な体験・交流型のプログラムを一定期間に集中的に開催するもので、大分県別府市の「ハットウ・オンパク」に始まり、国内外の多くの地域で同様の考え方によるイベントが開かれている。(本サイトでは過去に「長良川おんぱく」を紹介している

伊藤:民間の事業者さんが集まって、どのようにやっていこうと話しているのを見たときに、オンパク手法によるイベントを開催するということは、このように「自分たちごと」として取り組む人の輪ができることだと感じ、これは地元でもできるかもしれないと考えました。

 伊藤さんは東栄町でこの手法を使ったイベントを開催しようと計画書をまとめ、愛知県が奥三河地域で起業しようとする人を約10か月間支援する「三河の山里起業実践者」事業に応募、合格した。

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