日本遺産ブランド-文化財を活かした国際文化観光のベストモデルを目指して

稲葉信子筑波大学芸術系教授、日本遺産選定委員会委員長

2015.09.01

日本遺産ブランドが始動した

「日本一危ない国宝鑑賞」ができる投入堂(鳥取県三朝町) 「日本遺産」の認定事業が始まった
「日本一危ない国宝鑑賞」ができる投入堂(鳥取県三朝町) 「日本遺産」の認定事業が始まった

 「日本遺産」の認定事業が始まった。
 これまで日本には、文化財保護法に基づく国宝や重要文化財、史跡、名勝など、高い歴史的価値、芸術的価値を有する文化財の指定制度があって、日本の文化の確実な保存に貢献してきた。日本遺産の認定は、同じ文化庁の仕事ではあるが、それらとは異なる新しい視点に基づいている。

 日本遺産という名称は、世界遺産を連想させる。しかしその具体的な中身は、これとも大きく異なっている。
 日本遺産は、地域に点在する文化財の組み合わせで認定されるが、重要なのはそうした個別の文化財を有機的に連携して、語られる地域固有のものがたり、すなわちストーリーである。そしてこれに加えて、そのストーリーを質の高い文化観光・地域振興に有効に結び付けていく、具体的なアイデアである。

 今年4月24日、最初の日本遺産18件の認定が発表された。東京オリンピックが開催される2020年までに100件ほどの認定を目指している。最初の18件のうちには、「日本一危ない国宝鑑賞」、「灯(あか)り舞う半島」、「飛鳥を翔(かけ)た女性たち」、「日本でもっとも豊かな隠れ里」など、人目を引く言葉がタイトルに並ぶ。

「灯り舞う」能登半島のキリコ祭り 提供:石川県観光連盟
「灯り舞う」能登半島のキリコ祭り 提供:石川県観光連盟

 日本遺産には、国宝や世界遺産ではできない遊び心が許されている。そこが日本遺産の他とは違うところである。

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