サイクルツーリズムでしまなみ海道の活性化を目指すシクロツーリズムしまなみ

山本優子NPO法人シクロツーリズムしまなみ 代表理事

2017.10.23広島県愛媛県

サイクルツーリズムでしまなみ海道の活性化を目指すシクロツーリズムしまなみ
しまなみ海道周辺を巡る女性限定ツアー「シクロ女子旅2017」。サイクリング初心者でも気軽に参加できるのが魅力

 愛媛県今治市と広島県尾道市を6本の橋で結ぶ全長約70kmの瀬戸内しまなみ海道。ここには日本初の海峡横断自転車道が併設されている。美しい海と島々を眺めながら海上を渡れるという魅力が賞賛され、国内外から多くのサイクリストが訪れるまでになっている。
 愛媛県今治市にあるNPO法人シクロツーリズムしまなみは、今治市、上島町(かみじまちょう)の島しょ部を自転車で活性化しようと発足した団体である。
 風景や地域の生活感を感じながら、自転車でゆっくりと地域を巡る新しい旅「シクロツーリズム」を提案し、サイクリストを地域に受け入れることで、持続可能なまちづくりを目指している。
 2005年から島しょ部のまちづくりに関わり、2009年にシクロツーリズムしまなみを立ち上げた代表理事の山本優子さんに、活動を始めた経緯や活動内容、人気のガイドツアーなどについて話をうかがった。

サイクルツーリズムでしまなみ海道の活性化を目指すシクロツーリズムしまなみ
山本優子さんとご家族。ご主人はシクロツーリズムしまなみでガイドを務める

島の暮らしを知る旅「シクロツーリズム」

 今治市は2005年に旧今治市を中心とする「陸地部」と大三島、伯方島、大島などの「島しょ部」11町村が合併して誕生した。しかし大規模な合併によって島しょ部の過疎高齢化が加速することが懸念されていた。
 そんな中、取り組んだ事業がある。自転車で渡れる橋「しまなみ海道」の特性を活かし、自転車で島巡りを楽しんでもらう「自転車モデルコースづくり事業」である。 
 今治市でまちづくり活動に関わってきた山本さんは、地域コーディネーターとして島しょ部の住民と一緒に事業に取り組んだ。人口減少が進む中、まずは交流人口の拡大を目指そうとする活動の始まりだ。

山本:伯方島からスタートし、大三島、大島の順で事業を展開しました。島ごとに呼びかけて、農漁業従事者、商工会議所青年部など職業も年齢もさまざまな住民に集まってもらい、意見交換をしたり、実際に自転車に乗りながら、島の面白いポイントを探し出して、それらをコースに盛り込んでいきました。最終的にはモデルコースという形でサイクリストに発信していきました。

 そしてこの取り組みをもとに、山本さんは島ごとの住民をつないで協議会を設立し、そのメンバーたちとサイクリストのニーズを探るためのモニターツアーやウェブアンケートを実施した。
 初めてサイクリストを迎えたモニターツアーが、今後のまちづくりの方向性を決定づける出来事となった。

山本:サイクリストは目的地まで効率よく走る旅よりも、わざわざ裏通りやみかん畑を縫うあぜ道などを通って、風景や町並みを眺めたり、地域住民と会話をして、島の日常にゆっくりと触れる旅に魅力を感じていました。そのときに島の姿そのものが観光資源になると気づいたのです。島の暮らしや住民との交流に魅力を感じてくれるサイクリストを持続的に受け入れていくことができたら、きっと島は活性化すると思いました。

 山本さんはサイクリストと住民の交流をテーマにまちづくりを展開する組織として「NPO法人シクロツーリズムしまなみ」を2009年に設立した。

サイクルツーリズムでしまなみ海道の活性化を目指すシクロツーリズムしまなみ
ガイドツアーの様子。生口島大橋を渡り、因島へ

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