Sakeから観光立国を目指して 酒蔵ツーリズム

平出淑恵酒サムライコーディネーター

2015.02.16佐賀県

地域を回遊する酒蔵ツーリズム

  2012年の民主党政権時に立ち上がった「國酒プロジェクト」により、多くの省庁が日本酒振興に関われるようになり、安倍政権でも成長戦略に入って、各省庁の取り組みが一層増えている。2013年3月には、観光庁に酒蔵ツーリズム推進協議会が誕生した。構成メンバーは酒造関係者、有識者、観光、交通関係者、地方自治体、政府機関、などで筆者もメンバーだ。協議会は毎年持ち回りで開催しているが、昨年は京都府が和食のユネスコ無形文化遺産登録イベントに併せて開催し、日本酒も含まれる和食の魅力に京都の文化がさらなる奥深さを加え素晴らしい協議会となった。今年は茨城県が担当し3月4日に水戸にて開催予定だ。会議の前後に県内の酒蔵訪問の機会も設けられている。

 日本酒は米と水、日本人のきめ細かい感性から造られた芸術品のような醸造酒であり、生産者である蔵元はそのほとんどが創業100年以上で、十代目以上が珍しくない、長年地元に尽くしてきた家族だ。嗜好品としてのみならず、その歴史や文化面でも海外にアピールできる素晴らしい魅力を備えているが、その90%以上が中小企業なので、海外からの訪問者に対応できる蔵は決して多くない。

 観光庁の酒蔵ツーリズムでよく紹介される事例が佐賀県鹿島市の鹿島酒蔵ツーリズムだ。2011年に「鍋島」銘柄で知られる鹿島市の富久千代酒造が、ロンドン開催の世界最大規模のワインコンペティションのSAKE部門で世界一に選ばれたことで、その世界的な発信を地域で活かそうと協議会が立ち上がり、地域を回遊するスタイルの蔵開きの祭りを成功させた。観光バスが酒蔵に乗りつけるオールインワンの酒蔵観光のスタイルではなく、酒蔵をコンテンツとして地域ぐるみで訪問者を迎えるので、酒蔵のみに負担がかかることがない。

 これが欧米でのワインツーリズムのスタイルだ。前述したように海外の人たちには既にワインの銘醸地を訪問するワインツーリズムはよく知られたレジャーである。国内では、インバウンドへの対応を含めると酒蔵ツーリズムはまだこれからの分野であるが、地域の多くの人々が関わっていける、まさに地域創生の産業であると思う。

鹿島酒蔵ツーリズム(2013年のチラシ)
鹿島酒蔵ツーリズム(2013年のチラシ)

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