地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅
近代土木技術を用いて日本最初の河川トンネルとして誕生した兵庫県神戸市の湊川隧道
みなさんは産業遺産をご存知ですか?
最近では、石見銀山や富岡製糸場、軍艦島などが続々と世界遺産になり、訪れたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。
今回は、最近注目されている産業遺産をめぐる旅について書かせていただきます。
産業遺産との出会い
私が産業遺産と出会ったのは2007年。趣味である写真の被写体として廃墟めぐりを始めたのがきっかけです。
当時はまだ産業遺産という言葉を知らず、使われなくなった工場や建物を全て廃墟と呼んでいました。
ボロボロになったコンクリートの建物の中に植物が力強く生えていたり、使われなくなった錆びた機械たちが置かれている景色は独特で、まるで映画の中の世界のようでした。
「こんな場所が日本にあったなんて……」
今まで生きてきて、出会ったことのない景色にすっかり魅せられてしまい、それからというもの、休みの日は全国の廃墟をめぐる日々が始まりました。
そんなある日、兵庫県にある明延鉱山(あけのべこうざん)へ行く機会がありました。
明延鉱山はかつて東洋一の錫(すず)鉱山と言われている場所で、坑道内をガイドの方が案内してくれます。
鉱山の歴史をわかりやすく話してくださったり、廃墟には産業遺産という見方もあり、歴史的に価値のある場所だということも教えてくださった素敵なガイドの方でした。
いろんな話しをしていく中で、明延鉱山の近くにある、すでに建物が解体された神子畑選鉱場の話しになりました。
実際この日、私も、神子畑を訪れたのですが、解体されてしまっていたため、「写真を撮ることは諦めた」という話しをしたところ、ガイドの方に
「君たちみたいな若い子が勝手に入ることで、壊されてしまうものもあるんだよ」と教えてもらいました。
当時、廃墟マニアが勝手に立ち入ることで、怪我をされる前に解体してしまおうという場所が多くあったそうです。
この言葉を聞き、自分たちが好きなものを自分たちの手によって壊すきっかけを作っていたなんて、あまりのショックで、声も出ませんでした。
自分たちに何ができるのか……。
当時一緒に活動していたメンバーといろいろ考えた結果、しっかりと許可を取り、全国の産業遺産をめぐる旅の実施や記録、活用をするNPO法人J-heritage(じぇい・へりてーじ)を2009年に設立しました。
NPO法人設立のきっかけとなった「明延鉱山」。見学した際の集合写真
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