地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅

前畑 温子産業遺産探検家兼写真家・NPO法人J-heritage戦略企画室室長

2017.09.05

地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅
神戸港ワンダーマッピングでは子どもから大人まで幅広い年齢層が参加。神戸税関が庁舎を開放し、参加者は旧税関長室や屋上から見る神戸港の風景を楽しんだ

地域の魅力を再発見するワークショップ ワンダーマッピング

 全国の産業遺産に関わらせていただいているのですが、その中でよくお聞きする悩みがあります。
 それは、産業遺産はあるけど、それ以外の地域資源がないというもの。
 今まで、全国のいろんな町を歩いてきたのですが、面白い地域資源がない所なんて1つもなかった私にとってはとても驚く悩みでした。

 私たちはその悩みを解決する1つの手段として、数年前から「ワンダーマッピング」というワークショップを開催しています。
 どのようなワークショップかというと、参加者が実際にまちを探検し、地域の魅力であるワンダースポット(地域資源)を発掘、共有するものです。

具体的な行程

1.地域資源の探し方の講座

地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅

いきなり地域資源を探してきてと言われても、参加者の人は何を探してきていいのかわかりません。
探し方講座をすることにより、面白い地域資源を探し出す視点の共有をします。

2.チームに分かれて探検

地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅

参加者をチーム分けし、割り振られたエリアを探検してもらいます。
また、各チームごとに必ず探してきてもらう場所の写真を渡し、全く同じ写真を撮影するようにお題を出しておきます。
参加者はそのお題と、自分たちが新たに見つけたワンダースポット(地域資源)を見つけ、写真に撮ってきてもらいます。

3.資料作成

地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅

見つけてきた地域資源の写真を使って、発表会用のパワーポイントを作成します。

4.発表会

地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅

全チーム、見つけてきた地域資源を発表し、みんなで共有します。

5.表彰式

地域の魅力を詰め込んだ産業遺産をめぐる旅

参加者全員に地域資源を発掘してくれたことを表して「ワンダーマスター認定書」をお渡しします。

ワンダーマッピングの活用

 ワンダーマッピングでは、さまざまなジャンルのワンダースポットが発掘されます。
 地域の歴史が伝わる建物や道、マンホールや地域ならではの看板など、思わず笑ってしまうような面白スポットなど、どれも魅力的なものばかりです。

 では、この発掘されたワンダースポットたちはどのように活用すればいいのでしょうか。
 実はこのワンダーマッピング、活用の仕方がたくさんあるので、その一部をご紹介します。

活用例

1.マップ作り

まち歩きマップはたくさんありますが、観光地のみを載せているものが多いです。
そうすると、目的地まで車で移動するため、なかなかまちを歩いてもらえません。
そこで、ワンダーマッピングで見つけたスポットをマップ上にちりばめることで、魅力のあるまちだとアピールすることができ、まち歩きにつなげることができます。

2.グーグルマップと連携

見つけたスポットをグーグルマップに落とし込み、そのURLを地域の観光HPに載せます。すると、行きたいスポットの写真と地図がスマートフォンからも見ることができるので、旅人が行きやすくなります。

3.地域資源のストック

見つけた場所を利用してアートイベントの会場にする等、何かを開催する時の会場の候補にもなります。また、当日発表会で使用した写真をストックし、パンフレット作成などに使うこともできます。

4.ガイド育成

ガイドは勉強熱心な方が多いです。そのため、ガイド中についつい歴史ばかり多く語ってしまうことも。
ガイド研修という形でワンダーマッピングを開催することで、今まで気がつかなかった町の魅力に気づくことができ、ガイドの幅が広がります。

 また、ツアーの途中にワンダースポットを入れることで、お客さんの肩の力が抜けて場が和んだり、楽しむことでその地域を好きになってもらえるようになります。実際、私がツアーを作る時にも、ワンダースポットをたくさん詰め込むよう心がけています。

 他にも、目的に合わせて進め方を変化させることもできるため、現在では子ども向けイベントや大学でも開催させていただいています。
 地域の魅力をパワーアップさせる地域資源。
 ワンダーマッピングという手法を組み合わせて、日本全国の産業遺産を盛り上げていければと思っています。

リンク:ATSUKO MAEHATA

 

著者プロフィール

前畑 温子

前畑 温子産業遺産探検家兼写真家・NPO法人J-heritage戦略企画室室長

産業遺産探検家兼写真家・NPO法人J-heritage戦略企画室室長
保育士として10年勤務。その後産業遺産探検家兼写真家として活動を開始する。
湊川隧道保存友の会 幹事

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