地域とともにある生業の「やる人育て」。篠山イノベーターズスクールの観光人材育成

2017.09.01兵庫県

地域とともにあるビジネススタイルを

 篠山イノベーターズスクールでは、三つの講座を並行して行っていることのメリットも受けられる。

衛藤:商品開発プロジェクトでは草木を使った商品開発をしていましたが、そこで関わりのあった茶摘みの体験もツアーにできるのではないかという話があり、林業のプロジェクトでも、林業体験の提供ができるのではないかという話がありました。
 3つのプロジェクトの受講生が集まったミーティングでは「点同士をつなぐミツバチのような役割がツアーガイド」という話も出ました。今後はこのスクール内外で連携ができるでしょうし、つなぐ役割をスクールでできればいいなと思います。

DSC04041-1024x683 3つのプロジェクトの受講生が集まったラップアップミーティング

 プロジェクト期間は終了したが、篠山イノベーターズスクールでは修了生の起業等に向けたサポートを引き続き行う。打ち合わせなどにはラボのスペースを使うことができる。受講生同士もFacebookグループなどでつながりがあり、今後も連携の仕掛けができそうだ。

 梅谷さんは協力隊の任期の後も篠山に定住できるよう、起業を目指している。新法施行後の民泊開業なども検討している。

梅谷:自分がいかに地域の活性化につながりつつ独立していくかということが最大のテーマです。都心部だけでなく、自分の好きな場所で好きなビジネスができ、楽しんでいることが自然に地域の活性につながればと思います。

 篠山イノベーターズスクールでは9月10日まで、3期の受講生を募集している。「フタバ型農業で就農プロジェクト」「ローカルメディアをなりわいにするプロジェクト」「地域と生きるお店を継ごうプロジェクト」の3つのCBLだ。
 今回は初めて「継業」の講座を開講する。これは、市の担当者からヒアリングした市の課題の解決に向けたプロジェクトでもある。

衛藤:大儲けしなくてもいい、生活できるくらい稼げればいいという層が増えてきているのではないかと思います。今がよければいいというのではなく、長い目で見て、地域と一緒に、環境や次世代のことも考えながら行うビジネススタイルができていくといいなと思います。

 篠山イノベーターズスクールの観光に関する講座では、講師のノウハウを丸ごと知ることのできるような講座や、受講生自身の実践などで、観光事業の入り口へと導いている。観光事業に携わる人材のすそ野を広げていると言えるだろう。また、観光以外の講座と並行して開講していることで、他の分野と連携して観光を盛り上げることにもつなげられる。
 今後の課題は市内の他の組織などとの連携を強め、入り口に立った人材がさらに活躍する場をつくっていくことだろう。市役所の観光関係の部署、篠山市内にある日本版DMO候補法人、篠山イノベーターズスクールなどの間で、組織同士の情報共有はまだできていないようだ。こうした組織同士の連携に向け、何らかの形で専門のコーディネーターを設けることも、一つの方法として今後の検討課題となるだろう。

(取材・文/青木 遥)

リンク:篠山イノベーターズスクール 

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