未来の担い手をつくる観光まちづくり  高校生の居場所をつくり、一緒にまちの将来を考える佐原プロジェクト

「さわらぼ」を通じ日々の佐原を共有する機会に

未来の担い手をつくる観光まちづくり       高校生の居場所をつくり、一緒にまちの将来を考える佐原プロジェクト
利根川の支流である小野川は江戸時代からの舟運の集積地で、川沿いには江戸・明治に建てられた商店など伝統的建造物が並ぶ

未来の担い手をつくる観光まちづくり  高校生の居場所をつくり、一緒にまちの将来を考える佐原プロジェクト
観光客と住民の接点となる「さわらぼ」

 現在は高校生がイベント時を利用することが多い「さわらぼ」ですが、これからは観光客、住民、まちづくり活動に携わる団体の方々など、さまざまな立場の人たちが日常的に集まる場所であってほしいと思っています。

 高校生は、彼らなりの自由な視点や考え方によって、さまざまな立場の人たちに意見しやすい存在といえます。彼らが日常的に過ごす「さわらぼ」がまちに開いた場であることで、普段は関わりのない立場の人同士が出会うきっかけが生まれます。「さわらぼ」に高校生が介在し、お互いに話し合うことで、より深く佐原を知り、佐原の将来を共に考えていけるような機会をつくっていきたいと思います。

 例えば、普段接点を持たない観光客と住民が出会えば、観光客は住民目線のより深い佐原を知ることができ、住民は外部者から見た客観的な佐原を知ることができます。

 また、観光客にとって「さわらぼ」は、観光名所やお店といった通常の観光スポットではなく、歴史的市街地の中の隙間空間として、住民の方々や地元の若者らと腰を据えて話せる場所、何度でも訪れてよい場所となっています。通常の観光では味わえない、暮らしている人の日々移り変わる目線を共有し、佐原の日常の構成員と一つになった感覚を得ることができます。

 「佐原の日々の変化を知る」「知っている人がいつもそこにいる」という観光の形を生むことで、何度も佐原に来たくなるようなリピーター、将来の移住希望者の創出に発展させていくことで、佐原の活性化に貢献することを期待しています。

 さらなる効果の広がりを目指して、今後より多くの佐原の方々の協力を得ながら、高校生のまちづくり活動を継続していける仕組みを模索しています。

 高校生の活動や「さわらぼ」の存在が、歴史ある佐原の新しい一部となっていければ幸いです。

著者プロフィール

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻都市デザイン研究室佐原プロジェクト

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻都市デザイン研究室佐原プロジェクト

2009年都市デザイン研究室の「観光の回遊性向上」を目的とした調査・分析をきっかけに、プロジェクトが発足。2014年に高校生のまちづくり参画を目的に、空き家を活用した「さわらぼ」の実験を開始し、大学院生らが中心となって、高校生、地元住民と連携しながら佐原のまちづくり活動を進めている。

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