誰もが楽しめる旅をサポートするユニバーサルツーリズム 神戸での活動から
気軽に旅を楽しみたい
日常から離れ、その土地でしか食べられない物を食べ、いい景色を見ながら温泉でゆっくりと……。
旅は非日常を楽しむ最高の贅沢である。しかし、日常生活がネックとなり非日常を楽しめない人々もいる。
日常生活において介助を必要とする人の旅は容易ではない。その旅が宿泊をともなう場合は、さらに難しくなる。ヘルパーの確保、公共交通機関や宿泊先のバリアフリー状況や、観光施設や飲食店へのアクセス方法の確認などが必要となる。
たとえ、すべてが解決したとしても旅費の問題が残る。自宅以外の場所での生活介護(入浴や排泄の介助)は公的サービス外とみなされ、ヘルパー費用はすべて実費となる場合が多い(日帰り旅行のみサービス利用を認める自治体はある)。その場合、ヘルパー費用(時給1,500~3,000円程度)に加え、ヘルパーの交通費、宿泊費、食事代などを含めると旅費は高額となってしまう。これがネックで旅を諦める障害者は多い。これらを低く抑えるために、旅行中は家族介助とするケースも多いが、介助する家族の負担は大きく、共に観光を楽しむ余裕はない。
多くの障害者が、このような理由により一人旅や友人との旅を、もしくは旅そのものを諦めている。
みんなと同じように気軽に旅を楽しみたい、という障害者の思いを形にした活動が神戸にある。NPO法人ウィズアスが主宰する神戸ユニバーサルツーリズムセンター(注1)を中心に行っている、誰もが安心して滞在できる街をめざした神戸ユニバーサルツーリズムの取り組みである。センターでは、神戸に訪れる障害者の旅のコーディネートを行う。身体状況や使用する福祉機器を詳しく聞き、それに適した観光施設、飲食店、宿泊先の選定を行う。
センターの取り組みの中で、最も注目すべきは、必要な時と場所に応じて派遣する現地ヘルパーである。「入浴時のみ1人ヘルパーを派遣してほしい」などのニーズに応えてくれる。これにより、家族は介助者ではなく旅行者として共に旅を楽しむことができる。また、障害者の一人旅も夢ではなくなる。現地ヘルパーの宿泊費は不要、交通費も安く、旅行にかかる費用は軽減される。
他にも結婚式への出席、企画旅行などさまざまなサポートを行っている。このような旅の支援を行うNPO法人は全国各地に広がっており、センターが事務局を担う「日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」(注2)としてつながっている。これにより、障害者は全国どこへでも安心して旅に出られる。また、観光庁も発足当初から、この取り組みの普及、啓発を図るための調査、報告を行っている(注3)。
(注1)神戸ユニバーサルツーリズムセンター
(注2)日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク
(注3)観光庁ホームページ「政策について」「ユニバーサルツーリズムについて」
スポンサードリンク