楽しみ方を知れば、地域はもっと楽しくなる。ウェブメディア「ちちぶる」
独自の表現
浅見:地域のことを好きでいることはとても重要ですが、押し付けるような発信はよくないと思います。壮大な景色です、自然がたくさんありますと言っても、全国的に見れば自然の素晴らしいところはいくらでもあります。それを魅力的に伝えられるような、独自の表現が必要です。
秩父B級グルメの定番「みそポテト」。ちちぶるでは食べ比べの記事を掲載
浅見さんは地域の情報発信についてこう話す。独自の表現を生み出すためには、地域の人が地域外のことを知る、またはそこを面白いと思っている人がそこに行って見え方を共有するというやり方が考えられると浅見さんは話す。
また、浅見さんのようなウェブメディア運営者をはじめ、地域内外のウェブメディアやブロガー、インスタグラマー等SNSでの発信力のある人などと自治体などが連携することも考えられる。
浅見:自治体と外部の発信者が連携する場合、自治体が「教えてくれ」「プロだから任せます」といった意思を持たない姿勢であると、プロジェクトは成功しません。横瀬町では、自分たちはウェブやクリエイティブの力はないが、地域の人を巻き込んで行動する力はあるから、それはしっかりやるのでという話がありました。そうやって存在意義を出すこともポイントだと思います。あくまで、魅力発信やクリエイティブは共同作業だと思っていますので。
改めて秩父の魅力を浅見さんの表現で教えてもらった。
浅見:二つあります。一つは都会から近い。交通費も安い。何かを始めようとしても、移住するにしても、東京への便がいいのはハードルが低いです。
もう一つは「伸びしろ」「関わりしろ」があること。誰でもまちづくりの中心になれます。
さらに、秩父を観光で訪れる魅力についても聞いてみた。
浅見:近い、安い、にもかかわらず自然がすごくある。自然があっても都会からのアクセスの良さがあるところは少ないです。そして、四季を通じて幅広く遊べます。おしゃれなカフェもあれば、歴史深いまつりもあります。自分も、元は大したことがない場所だと思っていましたが、いろいろ回っているとすぐに1日経ってしまいます。
浅見さんがこれからやりたいことは多岐にわたっている。
浅見:ちちぶるを軸にしたツアーや通販サイトなどの事業をやりたいと思っています。ウェブで情報を見て、その場所を予約して体験するなど、一貫した流れをつくることによって、より深いものが提供できるのではないかと思っています。また、ウェブでリーチできない人のために、紙媒体のメディアもやってみたいですね。
ただ、今は浅見さん一人でちちぶるを運営しており、他のさまざまな仕事も手掛けているため、なかなか手が回らないのが現状だという。一緒に運営にかかわるメンバーを募集しているが、なかなか都合の合う人に出会えていないそうだ。「副業として、自分の関わりたい範囲で関わってほしい」と浅見さんは話す。
浅見さんの話からは、さまざまなメディアと連携して情報発信を行うときのポイントが見えてくる。
○さまざまなメディアでは、地域外からの視線や読者目線を用いて選んだ情報を、独自の表現で魅力的に伝えてもらうことが期待できる。
○自治体などの発注者もメディアの人に意図を伝えることが重要。
○自分のやったことが形になる手応えや喜びが、メディアの人のモチベーションになる。(ただし、もちろん、それだけに頼って過剰な負担をかけるやり方はよくない)
また、こうしたメディアと連携した情報発信により、「面白そうなことをやっているまち」「面白そうな人がいるまち」というブランディングにもつながり、まちに興味を持ってもらえることも考えられる。
秩父でも新しいことをやろうとする人のつながりが広がっているという話があった。メディアとの連携には、そのメディアとつながる多くの人を巻き込むことのできる可能性も広がっている。
(取材・文/青木 遥)
リンク:ちちぶる
■取材対象者プロフィール
埼玉県横瀬町出身。内装メーカー、ウェブマーケティング企業を経て独立、現職。横瀬町「よこらぼマガジン」編集長。
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