楽しみ方を知れば、地域はもっと楽しくなる。ウェブメディア「ちちぶる」

浅見裕ウェブメディア「ちちぶる」編集長

2017.06.09埼玉県

秩父橋から荒川を望む。秩父市中心部からほんの少し進めばこれだけの景色に出会える
秩父橋から荒川を望む。秩父市中心部からほんの少し進めばこれだけの景色に出会える

 地域を伝えるメディアは多様化している。フリーペーパーなどでは、他の地域の編集者や移住者がかかわり、より充実した内容やデザインのものも生まれている。またウェブマガジンや、ブロガーによる地域をテーマにしたブログ、発信力の強い人が運営するSNSもある。情報発信を課題とする地域も多い中で、こうしたメディアとの連携は課題解決の一つの方法だと考えられる。
 「ちちぶる」は、埼玉県秩父地域の情報を伝えるウェブメディアだ。2016年3月にオープンし、現在ではサイト閲覧数(ページビュー)は月に5万以上、Facebookページへのいいね!は3300を超える。

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今の秩父の情報を伝えるウェブメディア「ちちぶる」

 編集と運営は編集長の浅見裕(あざみゆたか)さんが一人で、「あざみっくす」の名前で行い、執筆や写真撮影のほとんども自分で行っている。ちちぶるではどんな情報発信をしているのか。また、こうしたメディアと連携してさらなる情報発信をはかるためには、どのようなやり方が効果的なのだろうか。

検索ではたどり着かない場所へ

 東京から西武秩父駅までは、特急を使うと池袋駅から約1時間20分。秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町の1市4町からなる秩父地域への観光入込客は、2014年に前年比107%、2015年も102%と、この数年で大きく伸びている。

 秩父は古くからの観光地として名前が知られ、西武鉄道では人気女性タレントを起用した秩父のCMを放映している。平日でも、西武秩父駅前ではシニア層を中心とした団体客を何組も見かけることができる。また、近年の秩父地域の観光の話題の一つが「聖地巡礼」だ。アニメ『あの花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』の舞台となり、多くの人が訪れている。観光協会等でも聖地巡礼マップをつくって配布し、まちのあちこちにその盛り上がりが伺える。

『あの花の名前を僕達はまだ知らない。』の重要な場面で登場する秩父橋
『あの花の名前を僕達はまだ知らない。』の重要な場面で登場する秩父橋

 

商店街に掲げられた『心が叫びたがってるんだ。』のフラッグ
商店街に掲げられた『心が叫びたがってるんだ。』のフラッグ

 ただ浅見さんは、秩父の魅力をこれとは別の視点からとらえ、発信している。今回は浅見さんに、秩父市の中心地を案内してもらった。
 最初に向かった羊山公園は、観光Reデザイン編集部から提案したものだ。ゴールデンウィークには特に多くの人が訪れるが、地元の人はあまり来ないという。「今年はわりとまだらになっていますね」と浅見さん。

奥に見えるのは武甲山
 奥に見えるのは武甲山

 次に向かったのは秩父神社。三峯神社、宝登山神社と合わせて秩父三社と呼ばれ、パワースポットとしても有名だが、実は色鮮やかな神社の建物にも彫刻などの見どころがある。

買継商通りの長屋
買継商通りの長屋

 そして買継商通りに案内してもらった。秩父には秩父銘仙という伝統工芸品があるが、このエリアにはかつて織物工場の出張所が連なり、織物を扱う買継商でにぎわっていた。現在は古い長屋をリノベーションしたセレクトショップや工芸品店など、おしゃれな店が続々とできている。

風の小路
風の小路

 通りから「風の小路」に入る。通るだけでわくわくさせるような細い道だが、誰でも通ることが許されている路地だ。置かれているものもどこか懐かしい。

黒門通り
 黒門通り

 そして黒門通りに出る。ここも秩父銘仙関係の問屋などが並んでいたエリアだが、人気のそば店があり、訪れたときにも行列ができていた。人気カフェもあり、市の中心を離れていても活気のある場所だ。

番場通り
 番場通り

 さらに進んで番場通りへ。ここは秩父神社の表参道で、昔から多くの店が集まっているが、浅見さんによると、近年はシャッターを下ろしている店も増えたそうだ。それでも精肉店やベーグル店など、おいしそうな店がある。浅見さんは酒店で、秩父市内に蒸留所のあるウイスキー「イチローズモルト」を初めて見つけたと購入。すぐに写真を撮り、インスタグラムにアップしていた。

  最後に訪れたのが、インタビュー場所でもある「秩父表参道Lab.」だ。番場通りに面する古い建物をリノベーションして昨年6月にオープン。インテリアショップ、カフェ、バーに加え、3Fにはワークショップや音楽ライブなどのイベントもできるスペースを開設したばかり。

クラフトビールの飲める店「まほろバル」
クラフトビールの飲める店「まほろバル」

浅見:観光客が「秩父 観光」と入れて検索しても、画一的な情報しか見当たらず、買継商通りや黒門通りのような趣のある場所や、ここのようなおしゃれな場所の情報にはなかなかたどりつきません。でも実際にはそうした場所がちゃんとあるので、その魅力を広げたいです。
 また、「灯台下暗し」の状態になっていて地元の人が知らない素敵なお店やスポットを知ってもらうことで、秩父自体を好きになり、地元に自信を持ってほしいです。

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