新しいプレーヤーと地域の魅せ方をデザインする 呉市豊町 井上明さん(後編)移住者の感性で魅せ方を変える

井上明合同会社よーそろ代表

2017.02.09広島県

移住者とのマッチングをコーディネート

IMG_3778
芸州藩から免許された茶屋の一つ「若胡子屋」。当時遊女100人を抱え、「お歯黒伝説」などの物語を残す。御手洗は江戸の全国いろ里番付でも上位に位置し、花魁をはじめ一流の芸子衆がいた

 まちづくりには新しいマンパワーも欠かせない。そこで井上さんは地区と移住者のマッチングをコーディネートする取り組みも行っている。もちろん移住希望者は誰でもいいというわけではない。例えば「海のきれいな港町でカフェをやりたい」という人ばかり集まってもうまくいかないのは明らかだ。また、町の景観を無視した店づくりをする移住者もふさわしくない。

 移住者のニーズをくみ取りながら、町の課題に合致して、今足りないものをうまく表現してくれる重要なパーツとなる人を呼び込んでいきたいという。

井上:「町の方向性を尊重し、独自の表現をしていきたいという人がいいですね。地方は都会からすると厳しい面は多いですが、来たからにはとことんサポートもしますから。ちなみに、島の古民家で写真館を開いているカメラマンの宮川トムさん夫妻は、東京の『ひろしま暮らしサポートセンター』を訪れた後、御手洗に来てここでの暮らしに誘い、移住につながりました。プロカメラマンはここにはいなく、表現できる仕事をしている人がほしかったですから。もちろん町の人達に自信をもって紹介できる素晴らしい人物でしたし。
 2017年には矢野さんと一緒に空き家を活用した数軒のゲストハウスの開業も予定しています。ゲストハウスができれば食と宿で島の魅力もより伝えられますし、いろんなソフト事業が組み立てられるので、呼び込める人も増えると考えています」

 町と調和しながら自分なりの表現、その人にしかできない表現を発揮して、プレーヤー自身も地域も共に輝ける事例をいくつかつくれたらという井上さん。町づくりで多忙な日をおくりながらご本人に気負いが感じられず、自然体で楽しんでいるようにも見えるのは、井上さん自身がこのまちで表現し続けることにワクワクしているからだろう。

井上:「私の役割はここに普通にあるものが実は普通じゃなかったんだと気づかせ、こんな生かし方ができるんだと行動し見せていくことだと思っています。何と何を組み合わせるか……生かされずにいる資源と人、モノを結び、それぞれが生かし合う関係性を築けたら、課題は次々と解決できると思うんです。よそ者と町の中からの両方の視点を生かしながら、御手洗が大好きな住民と一緒に創造的にチャレンジしていきたいですね」

 豊かな地域資源を生かしてチャレンジした先にある思い描く町の未来。それは今ある暮らしや文化を大切に守りながら、「暮らしてよかった」と思える町だろう。

(取材・文/川西由香理)

(前編)

取材対象者プロフィール

井上明

井上明合同会社よーそろ代表

広島市出身。外壁材メーカーに務め、鹿児島、宮崎に赴任した後、退職して広島県呉市に移住。2011年より呉市豊町の御手洗地区で地域資源を生かしたビジネス事業を展開し、町づくりにも関わる。御手洗重伝建の会の事務局長。合同会社よーそろ代表。御手洗地区でカフェなど4店舗運営するほか、妻が講師を務める「シニアパソコン教室えーる」も手がける。

ライタープロフィール

川西由香理

川西由香理

ライター。株式会社よつば編集広告事務所

1 2 3 4

スポンサードリンク