新しいプレーヤーと地域の魅せ方をデザインする 呉市豊町 井上明さん(前編)地域資源を生かしたビジネスモデルづくり

井上明合同会社よーそろ代表

2017.02.09広島県

島に惹かれ、町を案内するガイドになる

町並み保存地区
1994年に重要伝統的建造物保存地区に選定された御手洗。かつてのメインストリートだった常盤町通りには、妻入り塗屋造りの商家が並ぶ

 井上さんは広島市出身。大学卒業後は住宅の外壁材メーカーに勤め、鹿児島や宮崎に赴任していた。大工や設計士、施工者らさまざまな人と会ってルートづくりや販売を手掛ける仕事は楽しくやりがいもあったが、違和感を持つようになった。

井上:「会社で数字達成が優先していくことに疑問を覚えるようになりました。もっと目の前のお客さまの悩みをじっくり聞いてそのニーズにこたえる仕事がしたいと考えて。当時は若かったので、それは会社の枠組みの中ではできないと思い込んでいました」

 もともと自分で事業をしたいと考えていたこともあり、30歳を目前にして動くなら今しかないと決心。会社を退職し、奥さんの実家がある呉市に一家で移住してきた。

 それまで転勤族だったため、今度は一つの地に根を下ろして人脈を作り、事業にも取り組みたいと考えた。まずは「呉市を知ろう」と、観光ボランティア養成講座を受け、呉市内を歩いて回る中で、運命的な出会いをする。それが御手洗だった。

井上:「海と空と島々、多島美が引き立てあう色鮮やかな自然の美しさが素晴らしいですし、日本の伝統的な町並みが残っているのもひかれました。昔ながらの建物や暮らしが残っている町並みは、ゴミ一つ落ちていませんし、家々の前には一輪挿しが飾られてとても明るい。大切にしてきた暮らしや文化が垣間見える気がしましたね。町の歴史や文化をもっと知りたい、そして先人から受け継がれてきたこの地域資源を自分なりに表現していきたいと強く思いました」

 御手洗に惹かれた井上さんは週末を中心にボランティアガイドとして観光客に町を案内するようになる。迫力のある祭りや雅楽会など知れば知るほど御手洗の奥深さに魅かれ、すっかりはまっていったという。

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