バーチャルコミュニティが地域に共感を呼び、観光を促進させる 『おたるくらし』プロジェクトの現在と未来

佐山公一小樽商科大学社会情報学科教授

2017.01.06北海道

バーチャルコミュニティが地域に共感を呼び、観光を促進させる 『おたるくらし』プロジェクトの現在と未来

フェイスブックはどんなソーシャルメディアか

 読者の多くの方はすでにご存知かと思うが、ソーシャルメディアとしてのフェイスブックの特徴をまず整理しておきたい。ソーシャルメディアは同じバーチャルであっても、コミュニケーション形態は多様である。コミュニケーション形態の違いによって観光振興への活用方法も変わる。本稿ではフェイスブックを想定して話を進める。フェイスブックでは、匿名ではなく、個人の属性がお互いに知られている状況で、画像や短い動画、それに、文章を使ってコミュニケーションを行う。

 他のソーシャルメディアと同じようにフェイスブックでも不特定多数に情報が伝わる可能性がある。自分の知り合いに情報が伝わるが、その知り合いを通して、二次的に不特定多数にも情報が伝わることがある。

 全体的に見ると、現在、フェイスブックのユーザ層の多くは60代以下である。60歳を超えるユーザは少ない。最も多いフェイスブックのユーザ層は30代である。フェイスブックには個人のページとグループのページがある。多種多様な組織がグループのページを開いている。ソーシャルメディアを観光振興に使う場合にはグループのページを作ることになる。以後このグループのページを指して、FBページと呼ぶことにする。

そもそもどのような状況でフェイスブックが観光振興に役に立つようになるか

 フェイスブックのバーチャルなコミュニティ上で知り合いになって、それがリアルな知り合いに変わることもありうるが、そうしたケースはこれまでの筆者の経験から言って少ないのではないかと思う。フェイスブック上で個人やグループがバーチャルコミュニティを作って永続させていくには、そもそもリアルなコミュニティがなければならないと考えている。フェイスブックを観光振興に使うためには、地域にリアルなコミュニティがしっかりあることが前提となる。東京や大阪などの都市近郊には、リアルなコミュニティそのものがないので、そうした地域でフェイスブックを使って観光振興をしようとすると、その前にまずコミュニティを作るところから始めなければならない。幸い、現在日本ですでに観光地となっているようなところは、たいていリアルなコミュニティがあるので、フェイスブックを観光振興に使う要件は満たしている。小樽もその一つである。

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