おとな旅・神戸の魅力 DMOが取り組むべき着地型観光の要点を探る

高橋一夫近畿大学経営学部教授

2016.11.10兵庫県

顧客価値を追求した「おとな旅・神戸」

 

おとな旅・神戸の魅力 DMOが取り組むべき着地型観光の要点を探る
ファッションや夜景など「おしゃれなまち」神戸のイメージが打ち出された第1回「おとな旅・神戸」のパンフレット 

(1)「おとな旅・神戸」のコンセプト

 神戸市は、1868年の開港以来、建築、まちなみ、ライフスタイル等に西洋文化を取り入れた「おしゃれなまち」として、若い女性を中心に年間3,500万人以上の観光客が訪れる観光都市である。特に1977年秋にNHK連続テレビ小説『風見鶏』が放送されたことをきっかけに、北野の異人館街に多くの観光客が訪れるようになり、観光都市として広く認知されるようになった。

 神戸と言えば、市街地、北野の異人館、ウォーターフロント、南京町、六甲山、有馬温泉、須磨、舞子など、さまざまな顔を持つバラエティ豊かな観光スポットを有し、神戸ビーフやスイーツ、中華料理、灘の酒など食文化も多彩である。また、アパレルや靴のメーカーも集積し、ファッション都市としても名前が通っている。

 これだけ観光資源が豊富な神戸は、多彩であるがゆえに焦点がぼやけ、観光地としての魅力をうまく消費者に訴求できない悩みがあった。神戸のまちの魅力を具体的に「見える化」する必要に直面していたのである。

 こうした状況下で、神戸市が2013年度よりスタートした事業が「おとな旅・神戸」である。これは、熱烈な神戸ファンをつくり、リピーターの確保と口コミによりさらなる誘客を図ろうとするもので、特に中高年の女性をコアターゲットにプログラム開発を進めた。また「おとな旅・神戸」を単発のイベントで終わらせないよう、事業の継続性を考える必要があった。議論の中で提出された基本方針が「徹底した顧客価値の追求」と「持続可能な事業展開」であり、この基本方針を基にさまざまなプログラムが企画されていった。

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