地域資源を活用した健康と観光の取り組みによる地域活性化  ヘルスツーリズム

木下藤寿NPO法人熊野で健康ラボ代表理事

2015.10.01和歌山県

熊野古道ヘルスツーリズムの仕組みの広がり

参加者全員でストレッチ
参加者全員でストレッチ

 このように、熊野古道では地域資源を健康づくりに活かし、同時に観光や地域活性などへと結びつける仕組みをここ10年来実施している。

 世界遺産登録に併せて始めた「熊野古道の健康ウォーク」は、2008年には第1回ヘルスツーリズム大賞(NPO法人ヘルスツーリズム振興機構)、2013年には、第1回健康寿命をのばそう!」アワード(厚労省)団体部門優良賞を受賞。また、近年、国内のほか海外の自治体、大学等からのヘルスツーリズムに関する視察、一般来訪者が多くなってきた。

温泉津ヘルスツーリズム協議会の取り組み

 熊野古道の仕組みを参考にしている取り組みの一つが温泉津ヘルスツーリズム協議会である。

 島根県大田市では、健康保養地・クアオルト構築に取り組んでおり、市内4つの地域でそれぞれ民間によるヘルスツーリズムの取り組みのための組織を立ち上げた。

 中でも「温泉津ヘルスツーリズム協議会」はその先進事例で、組織化、毎週2回の早朝ウォーク、定期的な健康ウォークの開催、レベルアップ講座など、地域の宿泊施設、温泉施設などの関係者が集まって、地域活性化、交流人口増加、地域の健康づくりに寄与する取り組みを行っている。また、島根県のヘルスケアビジネス事業にも参加し、ヘルスツーリズムのビジネス化にも取り組んでいる。

 これらの見本は熊野古道のシステムであり、地域相互の連携も含めた交流が始まっている。

健康への効果を上げ、ビジネスとして成立させる

 全国各地でヘルスツーリズムの取り組みが進められるようになってきたが、ビジネス化や健康効果を得る仕組みは十分でない。国の再興戦略としてヘルスツーリズムが進められており、今後、ビジネスモデルや健康効果などを得るための効果的な方法が重要になってくると思われる。

 その点、現在のところ熊野古道モデルは、地域資源をビジネスや健康プログラムに活用するなど社会ニーズを先見の目で捉えたプログラムであり、何かの参考になれば幸いである。

著者プロフィール

木下藤寿

木下藤寿NPO法人熊野で健康ラボ代表理事

福岡大学大学院体育学研究科健康運動学修士課程修了。専門は、高血圧や糖尿病などの運動療法、マラソンや登山の科学。熊野古道はじめ国内外で健康保養地開発、ヘルスツーリズムの実践を行っている。健康運動指導士、気候療法士。熊野古道健康ウォーキングは、第1回ヘルスツーリズム大賞を受賞。NPO法人熊野で健康ラボは、厚生労働省「第1回健康寿命をのばそう!アワード」事業「優良賞」受賞。最近の主な研究テーマは、地形療法を活用した健康・保養。

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