地域資源を活用した健康と観光の取り組みによる地域活性化 ヘルスツーリズム
ヘルスツーリズムとは
人口減少問題や地方創生に関心が集まる中、地域資源を健康や観光に活用しようと、スポーツイベントや環境、観光などを軸とした各種ツーリズムが注目されている。
一方、厚生労働省は「健康日本21(第2次)」において、健康が単に個人だけの問題でなく、健康づくりを行う環境整備が重要であり、また、介護や高齢化対策について公的サービスのみならず民間サービスも併せて行う包括ケアサービスを行う必要があるとしている。
これら地方活性化や健康問題解決の一つとして経済産業省や厚生労働省、観光庁などは、ヘルスケア産業を日本再興戦略に掲げさまざまな取り組みをスタートさせている。
ヘルスツーリズムとは、旅先で健康や療養を行う旅のスタイルのことで、これらヘルスツーリズムにおける潜在市場規模は4兆円とも言われている。
海外では、ウエルネスツーリズムとも呼ばれ、旅行全体に占める割合は15%(4,390オ億米ドル)であり、年々増加傾向にある。また、ウエルネスツーリズムの価格は、一般旅行に比べ2倍(約2,000米ドル)であり、日本では3倍(約750米ドル)となっている。(The Global Wellness Tourism Economy 2013,The Global Spa Economy 2007)
熊野古道での取り組み
熊野古道は2007年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録され、和歌山県では、世界遺産登録時から熊野古道を単に世界遺産の観光地としてではなく、地域資源を活用した健康と観光のプログラムづくりに取り組むこととした(熊野健康村構想)。
(1)熊野古道の健康効果
医療機関や大学との協働で実施した「熊野古道の健康効果検証(2007年)」では、熊野古道の森林内は、紫外線量が市街地に比べ50分の1と少なく、歩行中の心拍数も安全範囲内で、高いクッション性を持ち道幅が広い適度な凹凸道を歩くことで得られる効果は、平坦な市街地の公園を歩く場合と比較して、1回のウォーキング(90分~180分)の場合、大腿部の筋刺激、ストレス軽減、免疫力アップ、脳活性などの効果がより顕著であった。また2カ月間の継続的なウォーキング(1回あたり60分、週3回)の場合、熊野古道を利用したグループの方が、市街地の公園を歩くグループに比べ、大腿部筋断面積の増加、内臓脂肪の減少が有意で、その他脳活性効果、ストレス軽減効果、免疫力アップなどの効果がより高い結果であった。
(2)熊野で健康ラボ設置
そこで、熊野古道の健康プログラム開発や観光プログラム開発、人材育成などを専門に行う拠点として「熊野で健康ラボ」(2008年)を設置し、健康と観光をマッチングさせた事業展開を開始した。
(3)熊野セラピスト養成
熊野古道を健康的に案内する専門ガイドを3年間で30人養成。1コマ90分で32コマの講座で150人が講座に参加し、試験に合格した方を「熊野セラピスト」とした。
(4)着地型エージェントとの連携
地元に着地型エージェントが設置され、熊野古道健康プログラムの旅行商品を取り扱い、さらに大手旅行会社なども徐々にヘルスツーリズムに参入するようになっていった。
(5)滞在型プログラム開発
熊野で健康ラボでは、宿泊施設と連携し滞在型プログラム「ステイ&ウォーク」を開発。ワンストップでの受付ができる仕組みを作り、宿泊とウォーキングのセット商品を、一般旅行者はじめ企業や健保組合などに向け、健康づくりを目的とした長期滞在の仕組みを作った。
(6) 地元住民の健康づくり
来訪者への健康プログラムのみでなく、熊野古道ウォークや温泉プールでの水中運動など、地域住民の介護予防や健康づくりプログラムを開発し、地元住民の健康づくりを行った。
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