注目を集めるご朱印、パワースポットを巡る旅

岡本亮輔北海道大学大学院観光創造専攻准教授

2015.12.01青森県

青森のキリストの墓

キリスト祭(2013年)
キリスト祭(2013年)

 ここでは、宗教文化を用いた観光化の中でも、もっとも極端な例を見てみよう。

 青森県は、2011年から「美知の国」というキャッチフレーズを用いている。そして、県内のパワースポットとミステリーゾーンを60カ所選定してパンフレットを作成した。県内に眠る観光資源をあらためて提示し、魅力的なストーリーと共に紹介している。

 その中でも成功しているのが、三戸郡新郷村にあるキリストの墓だ。同村には、十字架刑を逃れたキリストが訪れ、そこで生涯を閉じたという伝承がある。もちろん、歴史学的にはありえない。

 しかし、村や観光協会、そして地域の有志がキリスト伝承を観光資源として育てあげた。墓の横にはキリスト伝承館が建てられ、キリスト伝承とともに村の歴史民俗について知ることができる。キリストにちなんだ土産物も売られている。こうした試みが奏功し、オカルト文化やパワースポットに興味のある人、興味本位の観光者らが新郷村を訪れる。

 さらに、毎年6月にはキリスト祭が開催される。すでに50年以上続けられており、村でもっとも古いイベントになっている。特に注目したいのは、キリスト祭という披露の場を得たことで、伝承の危機にあった伝統芸能が保存されたことだ。村に伝わる盆踊り唄ナニャドヤラである。キリスト伝承という偽物を観光資源に高めるプロセスで、観光誘致だけではなく、伝統文化が保存され、地域のアイデンティティが育まれたのである。

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