島で泊まる、島を感じる 瀬戸内国際芸術祭
民泊に泊まる
旅のスタイルが多様になってきたため、今、民泊のニーズが高まっている。ゲストハウスなどと呼ばれることもあり、民宿よりもっと簡易で気軽に宿泊が提供できる宿泊施設として人気が高まっている。法的にはまだ未整備な部分が多く問題も残しているが、自由度の高さもうけ、外国人や若い人に人気がある。地域住民が自宅の離れなどを開放し、簡易的に宿泊できるようにしているものも多く、今回宿泊したバンブーヴィレッジもその方式だ。1泊朝食付きで4,000円だが、朝食はあらかじめ用意されたパンとコーヒーを自分で出してきて食べ、後始末も宿泊者がおこなう。スタッフはチェックインが終われば母屋に戻り、夜間は宿泊者自身の自己管理となる。
面白いのは、オーナーの個性がよく出ている施設が多いことだ。バンブーヴィレッジは現オーナーが親族から相続した建物で、母屋の隣にあり、最初のオーナーはヨガ教室などに使っていたという。室内外に知人であるアーティストの制作した金属アートや陶芸家の食器などが多数飾られ、「アートの島」にこだわりを見せている。
ただ、民泊についていえば、宿泊者の自主管理にまかされる部分も多いので、泊まる側のマナーの高さこそが求められるところでもあるだろう。
歴史を聞こう
豊島の段々畑の穏やかな風景からは、産廃などまったく感じられない
この地域の島には近代化にともない精錬施設、産廃不法投棄など歴史的に負の遺産を負わされてきたところもある。直島は大正5年から銅精錬所の受け入れをはじめ、一時期は企業城下町としての性格が強く、亜硫酸ガスなどの煙害で長く苦しむ時代を経験している。現在は事業の縮小や科学技術の高度化など循環型社会への転換も進んでその影響はなくなっているが、そういう苦境の時代を乗り越えてきているのである。
隣の豊島もかつて産廃の不法投棄事件があった。段々畑で出会った農家のご主人は高台から周辺を見渡しながら、「豊島は一時、産廃問題が起こり大変な風評被害を受けた。投棄現場は島の端っこにあり、実際に被害を受けたのはごく一部の限られた地域だった。でも、私たちが作った農作物はまったく世間から受け入れてもらえなくなった。オリーブに取り組んだのは国内では豊島が最初で、小豆島や牛窓より早かった。品質は今も最高のものが採れているのに」と悔しそうに、しかしどこか誇らしげに語ってくれた。
また、近畿圏に近いだけに古代から続く歴史にはことかかない。日本書紀の時代に遡れば、品陀和気命大王や応神天皇の名前が見え、平安期には崇徳上皇の直島御所などという表記もみられ、戦国期には水軍もあったそうだ。今も島内の地名には「納言様」「姫宮」「姫泊」などの字名が残り、バス停には「天皇下」もあるなど、由緒ありげな名前がたくさん残っている。時間があれば、島に伝わる歴史を島の方から聞いてみたいものである。
(文/太田正人)
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