島で泊まる、島を感じる 瀬戸内国際芸術祭
「島」には都会と正反対の暮らしや時間の流れがある、そんな魅力を感じる。都市に暮らすなかで忘れがちな何かを取り戻せそうな場所、そんな期待をもって、瀬戸内海に浮かぶ豊島と直島を訪問した。
直島は20年以上前からベネッセが現代アートを通してまちおこしに取り組んできた場所であり、今、この地域を中心に3年に1回のトリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭2016(春期3月20日~4月17日)が開催されている。その関連取材を兼ねた開催直前の訪問ではあったが、ここでは「島の魅力」を中心に報告したいと思う。
時間を感じる
島にはどこかゆったりした時間が流れていると思う。すでに船に乗ったときからこの感覚は始まっていたし、島に渡ったときには確信になっていた。いつも慌ただしい生活に慣れてしまっているからかもしれないが、ここでは「島の時間」のようなものを感じたいのだと思う。憧れに近いものがあるかもしれない。
今は橋で渡れる島も多くなったが、「島」を感じるならやはり船がいい。船便の頻度は都市の乗り物とは比べられない。1日1便しかないこともあるだろう。橋はいつでも通れてとても便利だけれど、「島の時間」を感じたいのならやはり船である。船で移動するゆったりした時間経過を感じることが一つの鍵になる気がする。
便は1日に何本あるか、どの港から渡ればいいか、天気は大丈夫か、そういうちょっとした不安をもちながら渡ることで、自分にとっての「非日常」に入っていく心の準備ができてくるのだと思う。
島内での交通手段は少ない。訪問者には公共バスかレンタルサイクル程度しかなく、あとは自分の足が頼りである。ならば、その「不便」を時間的余裕、ゆとりとして感じたいところだ。実際、バスはたいてい船便にリンクして走っているので、思うほど不便ではないようだ。
あとは自分の足で歩いて、見て、手持ち無沙汰な時間を「今日の自分のお宝」として感じるのが一番幸せな時間の使い方なのだと思う。
船を下りバスの時間を確認したら、まずは港を見たりあてもなく周辺を歩いたりしたい。そうしていると、地元の方たち、おじいさんやおばあさんたちに出会うかもしれない。猫や犬もなんとなくゆっくり動いている気がする。
後の話だが、宿泊した直島のゲストハウス・バンブーヴィレッジのスタッフ吉野綾さんからは「リピーターの方たちの時間の使い方は、何もしないでのんびりしたり、ただ散歩をする人もたくさんいます。観光でも、自分のお気に入りの美術館1軒に絞って、ゆっくりじっくり見てくるとか、そういう方も多いようですね」という話をうかがった。
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