「観光地域づくりプラットフォーム」の意義

清水愼一立教大学特任教授

2012.03.01

 「観光」の形態が急激に変わった。団体が減少しただけではなく、従前の温泉・グルメを目的とした「非日常観光」は徐々にシェアを落とし、まち歩きや歴史・文化を目的にした「異日常観光」が地域の観光の主役に躍り出た。

 今や、観光施設や温泉、名所旧跡などの古典的な観光資源に依存しただけでは観光客を満足させることはできず、元気な暮らしをベースにした地域全体の魅力やまちの雰囲気そのものを観光資源として磨かなければならない時代になった。

 このような「異日常観光」の時代では、観光産業関係者をメンバーとした観光協会が主導する一方的なプロモーションと一過性のイベントが中心の従来型観光振興は全く通用しない。このような時代の観光振興は、住民が誇りを持ち、住み続けたいと思うための「地域づくり」の活動に全体で取り組むとともに、様々な触れ合いを通して来訪者を楽しませながら地域を一層豊かに元気にするという、いわゆる「住んでよし、訪れてよし!」の取組みが重要である。このような取組みにより、地域全体を持続的に豊かにする「観光立地」本来の目的も達成できる。

 「住んでよし、訪れてよし!」の観光振興の取組みとは、具体的には観光により地域を豊かにしたい住民自らが主体になって地域の暮らしに触れたい来訪者の視点に立ちながら、外部マネージメントや行政に頼ることなく地域ならではの資源を掘り起こし、その個性ある魅力を再認識し、それらの魅力を来訪者に直接繋ぐ活動である。

 その活動では、観光事業者と観光に無縁だった人たちとの垣根を当然超えなければいけないし、官民がそれぞれの役割を果たすという意味で官民の垣根も超えなければいけないし、さらには来訪者のニーズや動向を踏まえると自治体の垣根も越えなければいけない。

 「観光地域づくりプラットフォーム」とは、このような様々な垣根を乗り越えるべきだという問題意識に基づき、住民と来訪者を観光により直接繋いでそれぞれの満足度を最大限高めていく地域主体の「観光マネージメントの場」である。

 全国には、このような場を通して「住んでよし、訪れてよし!」の観光地域づくりに早くから取り組むとともに「観光立地」の本来の目的を達成している地域はたくさんある。過日、このような組織が集まって、「観光地域づくりプラットフォーム推進機構」が発足した。私はこのようなネットワークこそが「観光立国」を名実ともに支えていくと確信している。

著者プロフィール

清水愼一

清水愼一立教大学特任教授

スポンサードリンク