「島カフェ」で訪れたくなる島へ 直島を事例として
島カフェ経営の課題
現代アート以外の集客も今後は必要
最後に、これまでの直島でのカフェ経営を通じて感じる課題について述べてみたい。直島における島カフェの増加は、島内者による開業など地域経済にも少なからず良い影響を与えており、さらに、観光客と島民の交流の場としても地域に良い影響を与えている。一方、島カフェを持続的に経営するにあたっては、直島を取り巻く社会環境の変化から、さまざまな課題も顕在化してきている。
直島は、前述したように、現代アートの島として注目されているため、アートによる集客が見込めるという点においては、他の島々と比較して、社会環境に恵まれた島といえる。しかしながら、アートにより集客されるからこその問題点もある。瀬戸芸開催による年ごとの客数の極端な変化と、年間における繁忙期と閑散期の客数の極端な差である。
瀬戸芸が開催された2010年とその前後では約20万人もの客数の変化が見られる。前述のとおり、瀬戸芸に合わせて出店したカフェも多数あり、直島全体のカフェの増加と直島を訪れる客数の減少は、個々のカフェ経営に二重の打撃を与える結果となった。
また、直島の集客はアートにより牽引されているとはいえ、他の観光地と同様に、気候の影響を大きく受ける。すなわち、8月や9月は繁忙期であるが、1月や2月は閑散期となり、年間を通じて安定したカフェ経営は困難である。
これらの課題を解決するためには、現代アートによる集客に頼るだけではなく、それぞれのカフェが差異化して、自ら個性を発揮しながら、他方で直島のカフェが協力して、直島の地域イメージとして「島カフェ」をブランド化し、島内外に向けて情報発信していく必要がある。個々のカフェの協力により、限られたお客さまというパイの奪い合いではなく、直島を訪れるお客さまを増やしてパイを大きくすることが、これからの直島における島カフェが共存できる方策であると、著者らは考えている。
■著者プロフィール
1993年岡山県生まれ。2012年香川大学経済学部入学。2014年1月より香川大学直島地域活性化プロジェクト代表。2014年度より香川大学技術補佐員として、古川教員のもと、粟島(三豊市)や王越(坂出市)など過疎地域をフィールドに研究・教育を行っている。
大阪府立大学大学院工学研究科博士前期課程修了、大阪大学大学院工学研究科博士後期課程を経て、1995年香川大学経済学部助手。2011年より現職。直島、坂手(小豆島)、瀬戸大橋記念公園(沙弥島)において学生主体のカフェを展開。粟島(三豊市)や王越(坂出市)など過疎地域をフィールドに研究・教育を行っている。最近では、高松盆栽を普及することを目的とした女子大生ユニット「Bonsai Girls」のプロデュースも手掛けている。
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