足を止めさせるもの・デザイン・見せ方とは  「乙女の金沢」が伝えるまちとひとの魅力

2015.06.01石川県

 ちょこっとトレー―桐工芸と若い世代をつなぐ

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岩本桐商店の「ちょこっとトレー」

 岩本歩弓さんは以前東京で出版社に勤めていたが、2004年に出身地の金沢に戻った。岩本さんの実家は桐工芸店を営む。金沢の桐工芸は華麗な蒔絵が特徴で、中でも耐火性に優れた桐火鉢は有名だ。しかし現在、桐工芸店は金沢で数軒となった。

岩本:桐工芸をよく知らないながらも、もう少し多くの人に知って使ってもらえるのではないかと思っていました。

 現在は、岩本さんのパートナーと、ろくろ職人である岩本さんの弟が岩本さんの父親とともに製作を行い、岩本さんは製作以外の仕事を担当する。直売所を整えたりしながら、岩本さんがつくり始めたのが「ちょこっとトレー」だ。飲み物とお菓子などを置けるトレーで、繊細な桐の手触りがあり、落ち着いた色合いに伝統や温かさが感じられる。

岩本:この質感になったのも10年ほど前からです。それまではもっとつやつやとした仕上げでしたが、自分たちが使いづらいので、少しずつ変えました。蒔絵も、もともとの絵柄をシンプルにしたり、新しい絵柄を考えたりしました。

 1枚1,500円からと値段も手頃だ。だるまなどの蒔絵を右隅に入れたものは、伝統的な手法と、現代風にアレンジされた絵柄が小さく入るデザインのコラボレーションで、目にした瞬間息をのむほど「かわいい」。

岩本:近所のカフェでも使ってもらいました。自分と関係ないものとして桐工芸を見ている人が多いですが、そうではないものをつくりたかったのです。

 桐工芸は「渋い」と形容されることもありそうだが、「かわいい」と言われることもある。岩本さんの目を探る重要なヒントの一つだ。

右隅にだるまの蒔絵
右隅にだるまの蒔絵

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