地域性を生かした「音楽」で新しい都市イメージを 川崎市「音楽のまち・かわさき」
音楽で新しい都市イメージを
多くの市民が通る川崎駅自由通路にも「フェスタサマーミューザ」の広告がある
川崎市では平成16年度の「川崎市シティセールス戦略プラン」で、川崎の魅力や強みとして「産業・研究開発」「文化芸術」「スポーツ」「自然」の4分野を重点的・戦略的に情報発信するテーマとした。今年3月に策定された「川崎市シティプロモーション戦略プラン」でも、音楽のまちの取り組みは発信すべき特徴的な分野の一つ、文化芸術分野の中に位置づけられている。冒頭の調査結果からも、11年の取り組みで「音楽のまち・かわさき」が着実に浸透してきていることがわかる。
川崎市には、これまで「公害のまち」といった好ましくない都市イメージを持たれていた実状もあった。
山本:「でも実は魅力的なまちで、例えば環境技術産業なども発展してきました」
中岡:「文化芸術は4本柱の一つで、潤いのある市民生活、心を豊かにして生きがいを持っていただく部分を担っています。また「音楽のまち」を打ち出すことで、シビックプライドの醸成や、認知度の向上につながるのではないかと考えています」
山本:「音楽を通して、川崎は元気なまち、楽しいまちと感じてもらいたいです。かわさきジャズを、国内外から見に来てもらえるイベントに育てたいです」
今後取り組みたいこともうかがった。
山本:「かわさきジャズもそうですが、皆で手をつなぎながら自分たちで担っていこうという市民の方々の、つなぎ役や後押しをする形をつくっていきたいですね。その中で関連する産業が育ち、さまざまな音楽の事業が、長く好循環に続けられればいいなと思います」
中岡:「そのために重要なコンテンツである、ミューザを生かす取り組みをしたいです。文化行政のシンボル施設として、世界的な音響水準を維持できればと思います」
川崎と音楽。その「親和性」は気付かれにくかったが、地域資源を見れば自然なことだった。福祉や経済の後回しとなりがちな取り組みを続けられたのは、地域に合っていたからではないだろうか。川崎市では「音楽資源」に気付くきっかけの一つが、市内の大学だった。地域の魅力につながる情報は、身近なデータにも潜んでいるのだ。また音楽を持続した取り組みにするためには、なぜこのまちで音楽なのか、市民が納得できるストーリーを組み立てる必要があるのではないか。
かわさきジャズにすでに見える「川崎らしさ」も、これまでの取り組みがあるから表現できたのだろう。かわさきジャズファンをつかめば、川崎を毎年訪れる客も期待できる。
今後大切なのは、山本さんも言うように、市民自らが動く力なのだろう。区のイベントでは市民スタッフが運営するものもあり、かわさきジャズが、ともに取り組みを推進する市民をさらに育てる可能性がある。また「音楽のまち」を知る市民が増えたことで、SNSなどでの情報発信も期待できる。「音楽のまち・かわさき」はさらに進化し、川崎市に新しいイメージを加える力を秘めている。
(取材・文/青木 遥)
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