地域性を生かした「音楽」で新しい都市イメージを 川崎市「音楽のまち・かわさき」
近年全国各地で、まちなかでジャズを演奏する「ジャズストリート」が開かれている。また、地域の数カ所で、同時並行でクラシック中心のコンサートを行う「ラ・フォル・ジュルネ」も、今年は全国4カ所で開催されている。
まちづくりのキーワードの一つに「音楽」を掲げることが各地で増えているようだ。しかしそれが地域に根付き、対外的にも知られている地域はまだ少ない。
川崎市は2004年から「音楽のまち・かわさき」を掲げた取り組みを続けている。2013年度に行った、市とその隣接都市在住者が対象の「都市イメージ調査」では、川崎市の「分野・キーワード」として「音楽のまち」を認知している人は40.3%もいた。この数字は「映像のまち」「ものづくり」などのキーワードの中で最も高い。なぜ川崎では「音楽のまち」の認識を、市民や近隣の人に浸透させられたのだろうか。またこの取り組みを、市民がまちを好きになるきっかけや、対外的なまちの認知度を高めることにつなげる方法はどこにあるのか。川崎市市民・こども局市民文化室の中岡祐一さん、山本陽子さんにお話をうかがった。
(記事内の写真提供:川崎市)
都市イメージの向上と愛着の増進
川崎市は市制80周年となる2004年に「音楽のまち・かわさき」の取り組みを始めた。その年の7月に「ミューザ川崎シンフォニーホール」(以下ミューザ)が開館したことが大きなきっかけだった。
ミューザは川崎駅西口地区再開発事業で建てられたビルの中にある。ビルに文化施設を入れることは、かなり前から計画されていたそうだ。完成したミューザは日本でも有数のホールで、特に音響については、後に訪れた多くの世界的な指揮者からも高評価を受けるほどだ。
ミューザ川崎
ミューザ開館を前に、川崎市では東京交響楽団と「フランチャイズ契約」を結び、定期公演をはじめとするミューザでの公演のほか、イベントへの出演、市内の学校での音楽鑑賞教室などの教育事業、児童・老人施設等の巡回公演などが行われることになった。
しかしミューザの活用はそれにとどまらなかった。調べると、市内には音楽大学が二つ、市民オーケストラが四つあった。合唱団などを合わせるとさらに多数に上り、現在では100を超す。
中岡:「実は川崎市内には音楽資源が豊富だったのです。これを生かさない手はありません」
ホール内観 ©堀田正矩
こうして始まった「音楽のまち」だが、当初は市民にもこの取り組みはほとんど知られていなかった。市では地元の音楽団体や企業などと「音楽のまち・かわさき推進協議会」を立ち上げ、協力して取り組んだ。
この取り組みは2014年の「川崎市第2期文化芸術振興計画」にも位置付けられている。ここでは文化芸術振興の基本目標の一つに「文化芸術や地域の特性・資源を活かしたまちづくり」が掲げられ、「音楽や映像、地域固有の歴史や伝統文化など、地域資源を活かしたまちづくりを推進するとともに、これらの魅力を国内外に向けて発信することにより、文化都市としての都市イメージの向上や地域への愛着の増進を図ります」とある。
中岡:「この取り組みが市民の皆さんの心の豊かさにつながるといいと思っています。そして川崎に住んでいてよかったと思っていただきたいです」
スポンサードリンク