薬師湯代表・内藤陽子さんに聞く、温泉津温泉のヘルスツーリズム

2015.10.01島根県

選ばれる滞在地へ

ギャラリー(奥)とカフェ
ギャラリー(奥)とカフェ

 内藤さんはヘルスツーリズム以外にも、温泉津を盛り上げようとさまざまな取り組みを行っている。

内藤:このまちは夜9時になると真っ暗になります。1カ所は明るい所があってもいいのではないかと、自宅の前を情報発信コーナーにして、窓から照明が漏れるようにしました。
 また、薬師湯の旧館にギャラリーもつくりました。バスの運転手で絵を描かれる方がいらっしゃるのですが、作品がとてもユニークで、まちを思っておられるのがよくわかりました。この場所を提供して絵を飾ることで、感謝の気持ちを表し、島根ブランドを育ててお客様にまちなみを知ってもらい、地元の方にまちの良さを知ってもらいたいと思いました。

窓から漏れる光が夜の通りを明るくする
窓から漏れる光が夜の通りを明るくする

 こうした内藤さんの活動の背景には、こんな思いがあるという。

内藤:私は東京で育ち、出雲には親せきがいますが、東京から出雲まではすごく遠いと感じます。遠いところへわざわざ来てくださることに感謝しなければ。わざわざ来てくださったのだから、安全・安心に温泉に入っていただき、楽しんでお帰りいただかなければと思います。

 内藤さんの「温泉の効能を科学的に証明したい」という思いは、お客様にもっと健康になってほしいという思いに発展し、ヘルスツーリズムへとつながった。これが大田市全体の取り組みへと発展したのは、ヘルスツーリズムが一つの場所に長く滞在してもらえる可能性を秘めたものであるからだろう。
 内藤さんは温泉やウォーキングなどの良さを科学的に証明することを重要視しているが、これは訪れる客にとっての魅力に直結している。これまで何となく健康に良さそうだと思っていたことが、泉質の5段階評価やストレス値の変化などとして提示されると、客も体験してみたくなる。全国でヘルスツーリズムの取り組みが増える中で、選ばれるのはこうした工夫のある地域なのではないだろうか。
 薬師湯では11月には島根県田舎ツーリズムキャンペーンのイベントを開催する。内藤さんは、以前も行っていたこうしたイベントを今後また行っていきたいという。こうした取り組みを発展させることで、温泉津での滞在型プログラムの誕生も期待できるだろう。

(取材・文/青木遥)

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