連載「地域ブランドの作り方」成功のための12のハードル ~その9.地域ブランドづくりにとって大切な「ネーミング」 ~名前がついていますか、それで魅力が伝わりますか~
前回、地域ブランディングにおいては、競争優位で本質的なモノやコトの魅力をわかり易く伝える必要があり、そのためにはデザインの働きが重要であることをお示ししました。
ネーミングこそが買いた気持ちを呼び起こす
今回は、引き続き魅力を伝えるためには「ネーミング」(名づけ)がとても重要であることについて述べたいと思います。いまさら「ネーミング」と言われても、という方が多いかもしれません。しかし、モノやコトがあふれているマーケットの中で、その商品が売れ、また人が来てくれるきっかけとなるのは、まず「名前」です。購買行動において、人々はまず名前を見るでしょう。加えて、情報があふれている現代では「一言で伝わる」ことが求められています。ますます、ネーミングが重要になっていると言って良いでしょう。
前回の記事で事例として挙げた「むかん」や「柳川名物 手づくりおひさまいちじく」、この名前でなければ成果の可能性は少なかったのではないでしょうか。とりわけ、地域ブランドづくりにおいては名前によって大きな違いが生まれてきます。それほど大切な名前にもかかわらず、多くの地域の特産品や直売所では、「キラリ○○、夢○○」などの抽象的な文言で魅力を表現しようとしたり、流行りモノを真似した「○○バウム、○○生キャラメル」などの魅力の識別に欠けるネーミングが多用されています。場合によっては名前がついていないケースもあるようです。
農産物や水産物ではこれが顕著です。鮭やイクラ、大根やホウレンソウ、ミカンやリンゴ、ただ素材の品種名だけが陳列棚のポップに示されているケースです。もったいないですね、せっかくの地域特産品がその地域を背景とした優位性を表現せずに販売されているのです。これでは、その商品や店の魅力は上手く伝わらないでしょう。名は体を表すとは良く言ったもので、名前を変えるだけで劇的に売り上げが伸びることが、マーケティングにおいては良く起こります。
良く知られているケースでは、例えば伊藤園のお茶。缶入りのお茶からペットボトルに、味も濃い味から飲みやすい味に内容も変わったのですが、売れ行きにとって一番大きな影響を与えたのは名前でした。すなわち、「伊藤園の煎茶」という表記から「おーいお茶」に変わったことでしょう。自宅でくつろぐお父さんが、お母さんに「おーいお茶」と呼びかけるシーンが想起され、魅力がストレートに伝わるネーミングの効果は抜群でした。加工品では有効だけど、一次産品では表現できないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
下の写真は、みかん箱ですが、ここには「間城正博・作、山のてっぺん、山北みかん、土佐」と表記されています。それまでこのみかんは、高知の「山北みかん」と表記されたJAの用意する共選用の箱で出荷されていましたが、この箱に変えたことによって土佐の「山のてっぺん」で間城さんがつくるみかんとして魅力がバイヤーに伝わり、大手の高級スーパーに商品が並ぶようになりました。
内容は同じでも、名前を変えることによって評価が高まった一次産品の成功事例です。このように、モノが売れるか売れないかを左右するネーミング、売れるために一番必要なことは買ってみたい、行ってみたいと思わせるネーミングなのです。
箱を変えたことで魅力が伝わるようになった「山北みかん」
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