図書館と観光の融合でにぎわいを創出 恩納村文化情報センター
「防災」「知識再発見」「春のおでかけ」など、テーマごとに集めた本を展示する企画が好評
来館するたびに違う図書に出会える年間100以上の企画展示
施設を利用してもらうためには工夫が必要です。施設作りは作るのがゴールではなく、運営して軌道に乗せるということが大切というのはいうまでもありません。
どんなに良い本も利用者に届かなければその情報は情報としての役割を果たせないので情報を届けるための取り組みには試行錯誤しています。
当館の図書の並びは、図書館の分類だけにとらわれず、利用者目線で棚作りを行うことを心がけています。また、定期的に本の展示をすることで本と利用者の出会いをより豊かなものにするよう工夫をしています。
当館ではそのような本の企画展示を開館当時から変わらず年間100テーマ以上を行っています。あっと目を引くようなキャッチコピーやデザインなどを心がけ、なるべく自分の知らなかった新しい分野の本と出合って欲しいと考えています。
テーマ展示以外でも毎日イーゼルに立てかけた黒板に自分の写真とともに「本日の司書のおすすめ本」を書くようにしています。毎日2人ずつで書くことにしていますのでこのコーナーでも年間500冊以上の本を紹介していることになります。スタッフにとっては本を選ぶ力とおすすめする言葉の選び方などが鍛えられています。
恩納村ならではの絶景を活かしたイベント
毎週行っているおはなし会に加え、講演会や、工作教室、図書に関するイベントなど、月一回以上のペースでさまざまなイベントを行っています。それぞれのイベントは図書館をもっと身近に感じてもらいたいという思いや図書館そのものに興味を持っていただきたいなどイベントごとにさまざまな狙いがあります。
その中でも立地を活かしたイベントや恩納村ならではというイベントについて紹介したいと思います。
サンセットウィーク:恩納村の国道はサンセット街道といって夕日の絶景スポットとして知られています。その道沿いに立つ当館では夏の日の入りが一番長い一週間をサンセットウィークとしています。
キャッチフレーズは「閉館時間は夕陽が沈むとき」。普段平日19時、土日17時までの開館時間を、夕陽が沈みきるまでサービスしています。夏場は20時前くらいまで明るいのでちょっとだけ長く滞在できるようになっています。普段から開館時間延長の要望などもあるのでこういったイベントを仕掛けることで実際のニーズや動向についても把握することができます。
夕陽が沈みきるまで滞在することができる「サンセットウィーク」
海辺のナイトシネマ:図書館の目の前、海のそばの遊歩道に大きなスクリーンを立てて映画上映会を行います。潮風のここちよさや海の匂いを感じながら夕焼けとともに映画を楽しむことができます。
潮風を感じながら映画を楽しめる「海辺のナイトシネマ」
ライブラリーコンサート:館内でコンサートを行うこともあります。これまでにサンセットウィークの時期やクリスマスなど数回行っています。図書館も開いていますので利用者は用意された席だけでなく、窓辺のリーディングカウンターで本を読みながら演奏を聞くなどさまざまな過ごし方で音楽を楽しんでいます。出演者は村内のリコーダーサークルやうちの司書を中心にしたバンドなど地域の人材などを中心に行っています。
サンゴに関する取り組み:恩納村は2018年7月に「サンゴの村宣言」を行い、世界一サンゴに優しい村を謳っています。この取り組みの一環として当館ではサンゴに関する講座と関連した事業を2つ行っています。
1つ目がサンゴの絵本作りです。サンゴに関する学習してもらった後、サンゴの絵本作り講座を開催しました。でき上がった15作品の中から特に優秀だった一作品を実際に販売し全国に流通させました。
2つ目がサンゴのかるた作りです。こちらもサンゴの学習を通して学んだことを受講者がそれぞれの絵札や読み札にするというもので実際に印刷し商品化する予定です。
こういった企画は図書館としては珍しく驚かれるかもしれませんが、実は図書館ではどの分類の本も扱っているので、役場の中のどの分野の事業ともコラボがしやすいと思っています。図書館をハブとして行政の取り組みや情報を伝えていくことも重要な役割だと認識しています。このほかにも、隣接するおんなの駅とゴールデンウィークに行うクイズラリーなど年間を通して催しはさまざまです。
さいごに
文化情報センターで行う観光情報提供サービスの特徴は、単に観光客向けの情報を扱うというのではなく、住民にとって有益な情報を観光客に提供するというところにあるかと思います。
図書情報フロアにおいても郷土資料の収集に力を入れ、村や沖縄県に関する情報を提供これらが観光客にも役立っております。ふと立ち寄った景色の良い図書館で見つけた一冊を旅のお供に借りて行ったり、子どもの自由研究のために役立てたりと県外の方からもさまざまな反応を頂いています。
観光スポットや遊びの情報以外にも文化や歴史風土、芸能や文学などさまざまな角度から村や沖縄を知ってもらうことを心がけています。住民のために行うサービスが結果として観光サービスにもつながるというイメージです。
村の魅力を村民とともに発見し、情報を蓄積し、訪れる観光客に伝える情報センターとして発展できるように創意工夫をこらしたサービスを模索したいと思います。
■著者プロフィール
筑波大学図書館情報学群博士課程単位取得退学。
大学院で研究しながら、大学の非常勤講師として司書の育成に携わり、専門図書館や公文書館・公共図書館などの現場で働くという三足草鞋を長年続ける。
2011年恩納村図書館準備室に採用。沖縄国際大学非常勤講師(図書館司書課程)日本図書館協会代議員。
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