図書館と観光の融合でにぎわいを創出 恩納村文化情報センター

呉屋美奈子恩納村文化情報センター係長

2019.02.20沖縄県

図書館と観光の融合でにぎわいを創出 恩納村文化情報センター
コバルトブルーの海を眺めながら読書ができるリーディングカウンター

はじめに 

 恩納村文化情報センターは、2015年4月に開館し、現在4年目を迎える図書館機能を備えた複合施設です。開館以来、入館者・貸出冊数・貸出人数ともに増え続けています。2001年に開館した恩納村博物館の隣に併設する形で建設し、1階には観光情報フロア、イベントを行ったり学習スペースとして使える多目的ルーム、2階は海を見ながら読書が出来る図書情報フロア、3階が展望室となっています。1人30分まで無料で提供するEV充電設備も設置しました。

図書館と観光の融合でにぎわいを創出 恩納村文化情報センター
国道58号線沿いに建設された文化情報センター。右手前に電気自動車の充電スタンドを設置

村民のニーズから誕生した複合施設

 恩納村文化情報センターが開館した2015年まで村内には一般の住民が利用できる図書館施設がなく、村民待望の施設でありました。2011年の4月に村役場の中に準備室を設立し、筆者が準備室の担当となりました。着任してすぐに、村役場の各課長で構成される委員会と、各係長で構成される作業部会を設けていただきました。その委員会・部会の中で、恩納村らしい施設を全員で検討した結果、「図書情報フロアと観光情報フロアをあわせもつ情報発信拠点施設」として建設することが決定しました。

 準備室設立1年目のうちには施設の場所の決定、翌年の2012年に設計、2013年の着工を経て、2014年の竣工に至り、翌年開館することができました。

 図書館に対しては、「学習室が欲しい」「子どもが楽しめるスペース」など図書館建設の要望や期待などがあった一方「図書館は必要ない」であったり、図書館ができることによる村の財政への影響を懸念する声もありました。
 そこで準備室時代から図書館への理解を深めるために、読書環境の整備・充実も図りました。近隣市町村に広域貸出のお願いをしたり、準備室内でも、図書の購入をはじめ、簡易的な図書館システムを導入し図書の貸出・返却を行いました。
 建設準備と並行しての図書貸出業務は大変でしたが、住民と直接接する機会を作ったことで図書館に対する要望を言って下さる方もいらっしゃいました。準備室独自で住民アンケートなども取り、住民の意見をできるだけ取り入れるように努力しました。

図書館と観光の融合でにぎわいを創出 恩納村文化情報センター
明るく清潔感のある「児童書コーナー」。左には恩納村の海をテーマにした青色の壁紙が特徴のおはなしの部屋がある

図書館と観光の融合でにぎわいを創出 恩納村文化情報センター
おはなしの部屋では本の読み聞かせができる。壁にはお魚のマグネットがつけられるような工夫も

観光情報提供の狙い

 図書館は行政の一部ですので、地域の持つ課題に即した運営を行うのは自然なことです。恩納村では、その取り組みが観光産業ということでありました。恩納村は沖縄のちょうど真ん中の西海岸に位置する人口1万人の小さな村です。南北27.4km、東西4.2kmと細長い地形であることも特徴です。

 1975年、沖縄返還および沖縄の日本本土復帰に伴う記念事業として行われた「沖縄国際海洋博覧会」が行われた年に、県内の主要道路の整備が進み恩納村に県内最初のリゾートホテル「ムーンビーチ」が開業しました。これを皮切りに東シナ海の海岸に沿って走る国道58号線沿いには、次々と多くの大型リゾートホテルが建設され観光の村として発展してきました。

 現在では県内屈指のリゾート地となっており、沖縄に宿泊する観光客の約3割が恩納村内のホテルに宿泊し、村にとって観光は重要な基幹産業となっています。構想の最初から恩納村の図書館と観光は切り離せないと考えていました。

 学生のときにある講義で先生が「外国人は観光など初めての土地を訪れたとき、まず図書館を訪ねるということは珍しくない。なぜなら図書館にはその地域の情報が詰まっていて旅の最初に土地のことを知るのには一番良い」ということをおっしゃっていました。

 その講義では主に北欧の図書館を取り上げて、さまざまな取り組みを紹介していましたが、商店街をリノベーションした図書館や歴史的な建造物など図書館そのものが観光のコンテンツとして充分力を発揮できそうなものでした。今でこそ図書館はさまざまな取り組みがされるようになりましたが、当時日本の古典的な図書館しか知らなかった私にとっては衝撃的でした。

 図書館が観光の役に立てるかもしれないという思いはその時からのもので、幸運にも海や自然に恵まれた観光村、恩納村に勤めることができて深く考えるようになりました。

 観光情報フロア設置にあたっては関係課が連携して審議を重ね、県外視察にも出かけ入念にコンセプト作りを行いました。恩納村の観光については、「雨天時に対応できる施設が少ない」「観光の平均滞在宿泊数を伸ばしたい」「マリンアクティビティだけでない観光ニーズの変化」などが課題でした。

 そこで、1階のフロアは単なる案内所ではなく、文化情報センターにふさわしい文化の蓄積と情報発信機能を目指したものにしようということになりました。

 観光情報は恩納村を知らない方に対しては村の魅力や見所を知ってもらうPR情報として有効ですが、村民に対しても郷土のよさを再確認することができるヒントがたくさん詰まっています。まさに図書館の情報が役に立つと考えました。これらの情報を有効に使っていきたいと考えたのがこのフロアのコンセプトになっています。

 現在、観光フロアの運営は商工観光課が行っており、観光協会から「旅の案内人」が2名配置されております。

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