連載「地域ブランドの作り方」成功のための12のハードル ~その8.地域ブランドづくりに必要な「デザイン」の働き ~そのデザインで、伝わりますか? らしさを「伝える」と言うハードル~
デザイン化と付加価値の関係を理解し、「見える化」させる
地域ブランドづくりを推進する中で、よくデザインで付加価値をつけるという表現がなされます。特に、地域資源をブランド化するケースでは付加価値を付けて高く売りたいと多くの方が思うようです。果たして、デザインによって付加価値をつけるとはどういうことでしょうか。ここで注意すべきは、時代とともにデザインに求められる内容が変化していることです。すなわち、デザインのありようによって上手く付加価値がつく、つかないが決まると言うことなのです。しかし、残念ながらその変化に対応できていないデザインが多く見受けられるように感じます。その理由は、市場のニーズが変化しているからなのですが、その変化に対応できず思ったように付加価値を生み出せない商品が多いようなのです。その理由を少し探ってみましょう。
これまで日本の市場では、明治の初めから近年まで西洋文化へのあこがれから、西洋に追いつけ追い越せという時代が長く続いてきました。これは、戦後の高度成長時代においても同じように、物質的な豊かさの象徴である米国やヨーロッパにあこがれる人々の声が市場ニーズとなってマーケットをリードしてきました。その象徴的な出来事をいくつか見てみると、明治の初めにいち早く西洋文化を取り入れた街並みである「銀座」を模倣し、各地に○○銀座商店街が誕生したことがその典型でしょう。そして、西洋風の豊かな余暇時間を過ごそうと、白い砂浜と椰子の木が象徴する南の島のバカンスにあこがれた気持ちを具体化するようなハワイの人気。その心理を背景として始まった、海水浴ブームやサーフィンのブームがありました。
特に人気の海水浴場では、例えば南紀白浜のように白い砂をオーストラリアから輸入し真っ白なビーチを造成、ヤシの木を海岸に移植するなどして、その思いに寄り添う整備をおこない需要に応え人気となってきました。しかし、残念ながらこのような西洋への憧れという大きなトレンド(戦後は特に、ほとんどのモノやコト消費がこの流れの中にありました)は終焉に向かっているようです。もちろん、まだまだなくなったわけではありませんが、憧れの多くが現実のものとなり、南の島でバカンスをしたくなれば簡単にハワイに行ける時代となっています。
同様に、モノにおいても豊かさの象徴であるかのようにルイヴィトンのバッグを求め、パリの本店に若い女性が大挙して殺到した時代はバブルの崩壊とともに過去のものとなってしまいました。このような現象にマーケットは長く左右され、デザインにおいても流行やトレンドを意匠として表現すれば売れる時代が長く続いてきました。しかし残念ながら、外から取り入れた流行やトレンドという服をまとった商品はすぐニセモノと見破られてしまう時代になってしまいました。しかし、ここにはまだ大きなハードルが存在しています。商品を「かっこよく」すれば(多くの場合欧米の流行を採り入れることがかっこ良いことだと思われてきました)売れるだろう。あるいは、流行やトレンドを採り入れれば売れる、人が来てくれると思っている人が多いようです。
もちろん、第5回連載でも指摘したようにモノマネが悪いわけではありません、問題はモノマネに反応する人が相対的に減少し、加えてすぐ流行が去ってしまう時代になっていることなのです。地域ブランドを目指すためには、すぐに収束する人気では成り立たないでしょう。地域ブランドにおけるデザインで重要なことは、外側からのよそ行きのデザインではなく、地域に関わるモノやコトの中身、本質を魅力ある形で「見える化」することなのです。内面にある魅力を掘り下げ、それが伝わるように服や言葉をまとわせることが必要な時代となっています。言い方を変えると、商品の本質を活かし魅力を感じるようにデザインすることによって、いわゆる付加価値が生まれると言って良いでしょう。
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