自分の思いと社会の要請をどうミックスさせるか。「染織ユトリ」主宰稲垣有里さんと若手職人グループするがクリエイティブの、視線を意識した挑戦

2018.04.16静岡県

ブラッシュアップを支え合う仲間

 稲垣さんは2013年にするがクリエイティブに参加した。塗師のメンバーに誘われて飲み会に行ったのがきっかけだった。

稲垣:そういう組織があるとは知っていましたが、行ってみると意外とみんな頑張っていて面白いと思いました。一人でやっていて、視野が狭くなっていたことにも気付きました。

 するがクリエイティブは2年前に世代交代し、新しい試みがより活発になってきた。最近はたびたび静岡伊勢丹で展示会を行っている。地元の百貨店なので、メンバーの知り合いも足を運びやすい。1~7階のエレベーター脇のスペースに展示すると、館内を回遊してくれる来場者が多く、店側へのメリットもあるようだ。
 また、メンバー間のコラボも行っている。例えば稲垣さんが作った袋物「kamibukuro」は、塗師のメンバーが作ったボタンを見て素晴らしいと思った稲垣さんが、ボタンを預かってきて作ったものだ。

DSC_0431
ボタンやデザインが特徴的な「kamibukuro」

 今年度は勉強会も企画している。静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)の補助金を活用し、講師として著名なバイヤーやクリエーターなどを呼んで、自分たちの作品を見てもらい、ブラッシュアップしようという試みだ。一人ではできなくても、メンバーが集まることで実現できる可能性がある。
 このように、外部の意見を聞く機会、そしてメンバー同士が話す機会を、稲垣さんもするがクリエイティブも大切にしている。外部のデザイナーなどとコラボして作品を制作しているメンバーも多い。

稲垣:自分たちだけだと見えなくなることは多くあって、言われると「そうだったんだ」と思います。
 それぞれ、自分の作品を追求せざるをえない。ただ工芸家はやはり人が使うものをつくるので、一人で好きなものだけ作っていればいいというわけではない、というスタンスは最初からみんな持っていると思います。
 一方で、全くの下請けの仕事は減っています。自分のやりたいことがないと続かないし、自分で前に出て行かないといけない、という話は、するがクリエイティブのメンバーともよくします。

 自分はこういうものがつくりたいということと、社会はこういうものがほしいということをミックスしないと売れません。その両方を意識しながらやっています。マーケティングをしないまま、全部空振りするのはよくない。打てる球筋を狙う。だけどそれだけだとつまらないから、変化球を混ぜたりして。それは、他のいろいろな仕事でも同じですよね。
 今の世の中に、ものはあふれています。例えば器なら、食事を盛る機能だけではだめで、何が魅力になるか。大量生産のものなら、安さや積み重ねやすさになるでしょうし、その人のテイストに魅力を感じる人が集まればファンがつきます。そうなったときに、さらに何ができるか。そこで、一人でやっていると行き詰まってしまうことがあるのです。

1 2 3

スポンサードリンク